大物狙うならドリフトダイビングにチャレンジしよう

大物狙うならドリフトダイビングにチャレンジしよう

1.ドリフトダイビングとは

ビーチダイビングであれば、ダイビングを終了して、上がってくるところはエントリー口、またはその付近になります。

また、ボートダイビングでは、ポイントにアンカリングして、潜り終わったらボートのところまで戻ってくることになります。(アンカリング:錨で流れないように固定すること)

このように、一般的なダイビングは、エントリーとエキジットの場所はほぼ同じところになりますので、戻ってくるのに残圧と時間に余裕を持ってダイビングの計画と実施をしなければなりません。

一方、ドリフトダイビングは、潮の流れに乗って、ボートがダイバーを追いかけてくるスタイルのダイビングをするので、元のところに戻る必要がありません。

そのため、より広い範囲を行動することができ、大物の遭遇率があがり、潮に乗ることによって一生懸命泳ぐ必要がないため、楽ができるなどのメリットもあります。

ドリフトダイビングとは、「潮の流れに乗ること」と、「ボートがダイバーに着いてくること」の2つのことが合わさってドリフドダイビングと一般的に定義されます。普段は流れがあるポイントであるけれども、自然が相手なので流れが止まっていることはあります。

また、ビーチダイビングで岸と平行に流れがあるときには、エントリーから潮に乗って、違う場所でエキジットするようなダイビングをすることがあります。

ここでは、ドリフトダイビングの定義として、流れがあってもなくても、エントリー地点とエキジット地点の場所が離れていて、ボートがダイバーを追いかけてくるスタイルとします。

そのため、ビーチダイビングで違う地点でエキジットするスタイルは、ドリフトダイビングから除外することにさせてもらいました。

この記事では、ドリフトダイビングの楽しみと必要なスキルについて説明を行い、日本国内および海外のドリフトダイビングができるポイントの紹介をしていきます。

2.ドリフトダイビングの楽しみ方【3選】

まったりとしたダイビングをして、心身ともにリラックスしたダイビングがお気に入りという人にとって、ドリフトダイビングは楽しくないという人がいます。

中には、伊豆半島のドリフトダイビングで有名な神子元島に毎週通い続けるほど、ハマっている人もいます。ドリフトダイビングにハマっている人に、どこが魅力かと聞いてみると大きく3つにまとまります。

  1. 大物が見られる
  2. 巨大な群れが見られる
  3. 広範囲を探索できる

ドリフトダイビングの楽しみ方①大物が見られる

ドリフトダイビング=大物というほど、ハンマーヘッドシャークやマンタやジンベイザメといった大物を見ることが、ドリフトダイビングの最大の楽しみと言えるでしょう。

マンタやジンベイザメは巨大な姿をしていますが、餌は小さなプランクトンです。流れが強いところにプランクトンは集まりやすいため、必然的に流れが強いところにマンタやジンベイザメが現れます。

ドリフトダイビングの楽しみ方②巨大な群れが見られる

ダイビングをしていると、あたり一面が魚に覆われるような経験をすることがあります。ドリフトダイビングをすると、今まで見た群れが小さくなるほど圧倒的な数と密度の魚の群れを見ることができます。

流れがないところの群れは、魚がいろいろな方向を向いていて、密度もそれほど高くありません。流れが強くなればなるほど、魚が密集して、全ての魚が同じ方向を向きます。魚の群れというと小魚のイメージがありますが、神子元島では伊豆でよく見るタカベやイサキのサイズが、どこよりも大きいものになります。

パラオでは、1mを超えるようなバラクーダが渦を巻いていたり、壁のようなギンガメアジの群れを見ることもできます。

ドリフトダイビングの楽しみ方③広範囲を探索できる

ボートをアンカリングすると最後にボートのところに戻ってこなければならないので、ハンマーヘッドシャークのように、どこに出現するかわからない生物を探すときには捜索範囲が狭くなってしまいます。

ドリフトダイビングの場合には、ボートに戻る必要もなく、流れを使って広範囲に泳ぐことができるので、大物遭遇率がアンカリングをしたダイビングに比べて遥かに上がります。

3.ドリフトダイビングに必要なスキル【5選】

ダイナミックな景観や大物や群れが楽しめるドリフトダイビングをスムーズにできるようにするには、ダイビングのスキルアップが不可欠です。単純にたくさん潜る数を多くするということではなく、次の5つを中心に上達していくと、ドリフトダイビングを本当に楽しむことができるようになります。

  1. スムーズな潜降
  2. 何も掴まないでの安全停止
  3. 流れに逆らうこともできるしっかりとしたフィンキック
  4. 広い視野
  5. パニックにならない精神力と判断力

ドリフトダイビングに必要なスキル①スムーズな潜降

ドリフトダイビングでボートからエントリーすると、グループがバラバラにならないように基本的には水面集合してから潜降します。潜降の合図があったら、ロープを使わないで自由潜降となりますが、全員同じスピードで潜降しなければなりません。

一般的に水面付近は流れが強く、水底は流れが弱くなります。そのため、水面付近で潜降に手間取ってしまうと、予想よりも流されてしまったり、先に潜降したダイバーとはぐれてしまいます。そうならないためにも、スムーズな潜降の技術と圧平衡(耳抜き)はドリフトダイビングで必須なスキルです。

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ドリフトダイビングに必要なスキル②何も掴まないでの安全停止

ドリフトダイビングを終了する前には、ガイドがフロートを上げて、グループ全員で安全停止を行います。安全停止をするところは決まったところではなく、何もない中層になるので、ロープを掴まなくても水深5mをキープできるように中性浮力が確保できるようにしてください。

ダイビング終了時には、シリンダー(タンク)の空気量が減っているため、ダイビング開始時よりも浮かびやすくなっています。安全停止をするために、徐々に水深をあげていくと、5mでストップすることができずに、そのまま水面まで上がってしまわないように注意してください。

また、ウェイトを重くしていると、5mまで上がったのにも関わらず、また深くに戻ってしまい、ダイブコンピューターの安全停止のカウントダウンが中断してしまうことがあります。

グループ全員が安全停止のカウントダウンが終わっているのに、一人だけ時間がかかるようだと、迷惑をかけることになりますので、ダイブコンピューターの水深表示を見ながら確実に安全停止を行ってください。

ドリフトダイビングに必要なスキル③流れに逆らうこともできるフィンキック

ドリフトダイビングは、流れに乗るから、しっかり泳げなくても問題ないかと思いがちですが、流れに逆らうことも多いので、流れに負けずに泳げるようにしておかなければいけません。

普段からまったりと潜るのに慣れているダイバーは、平泳ぎのようなあおり足でしか泳げない人も多いものです。あおり足によるフィンキックは、ゆっくり泳ぐのには力を使わずに楽をすることができますが、流れに逆らったり、ダッシュをしなければいけないときには、役に立ちません。

基本通りの自転車漕ぎのようにならないで大きなバタ足ができるようにしておいてください。また、使用するフィンもパンチ力のある硬めのフィンを選んで、使えるようにしておきましょう。

ドリフトダイビングに必要なスキル④広い視野

ドリフトダイビングをする場合でも、ほとんどの場合流れに乗って中層を泳いでいるだけでなく、根待ちといって岩を掴まって群れを見たり、大物が登場するのを待ったりします。

ものすごい魚影に見とれていて、ガイドが岩から手を離してグループ全員が中層に泳ぎだしているのに、一人だけガイドを見ていないと、他の人が流れで遠くにいってしまい、一人だけはぐれてしまいます。

また、せっかくどこを見ても、魚だらけなのに一方向だけ見ていたのでは、楽しみも半減してしまいます。

そのため、ドリフトダイビングのときには、いつも以上に視界を広くして、ガイド・自分のバディ・ダイブコンピューター・残圧計、そして魚や景色をキョロキョロと見るようにしましょう。

ドリフトダイビングに必要なスキル⑤パニックにならない精神力と判断力

ドリフトダイビングは、流れに逆らって泳がなければいけなかったり、エントリー時の慌ただしさがあったりと、普段のダイビングよりもストレスがかかりがちです。

ストレスでパニックをおこしてしまい、水面に向かってダッシュしてしまうと、大きな事故を引き起こすことになります。事故にならなくても水面に上がってしまうとグループ全員が浮上することになってしまい、ダイビング自体が終了となり、他の人に迷惑がかかります。

また、流れに逆らうときにはどこを泳ぐかによって、流れが当たるか当たらないかが変わります。水中ガイドは流れに逆らうときには、なるべく流れが当たらないように、岩陰に隠れるようにして進みます。

自分もガイドと同じコースを通ることによって、体力を温存することができます。根待ちをするときにも、どの岩に掴まれば流れに当たらずに、それでいて魚を間近に見ることができるかを判断できれば、ドリフトダイビングの楽しみを上げることができます。

4.ドリフトダイビングができるポイント

国内

  • 南伊豆「神子元島」・「中木」

伊豆でドリフトダイビングと言うと、ほとんどの人が神子元島と答えます。神子元島は流れが強いことが多く、ハンマーヘッドシャークをはじめとした大物や、壁のような魚の群れを見られることで、ドリフトダイビングをする上で典型的なポイントです。

【南伊豆】神子元島の魅力!ハンマーヘッドシャークと泳ぐダイビング

ハンマーヘッドシャークの群れが見られる神子元島 この記事を読んでいる人は、ダイビングを始めたばかりの初心者、またはノンダイバーの人もいるかもしれません。神子元島は面白い海だから、すぐに潜りにいきたいと思うかもしれませんが、残念なが[…]

神子元島の他にドリフトダイビングができるポイントでは、神子元島と同じ南伊豆にある中木があります。中木は、潜降する場所にブイがあり、流れもそれほど強くなることはないため、ドリフトダイビング初心者が練習する場所として最適です。

  • 西伊豆「田子」・「雲見」

他には西伊豆の田子の沖の島または田子島裏、雲見の牛着岩の裏側も、ボートからエントリーして流れに乗り、流れの下流でボートに拾ってもらう、ドリフトダイビングと同じスタイルで潜ることができます。

【西伊豆】雲見では伊豆随一の地形ダイビングが楽しめます!

伊豆半島で一番の地形ダイビングが楽しめる雲見 西伊豆の最南端にある雲見は、ダイバーにも人気ですが、バイクでツーリングに行く人にも人気です。大型の魚が釣れることから釣り人にも人気で、ボートで沖磯に連れていってもらい、釣りをしている人[…]

  • 与那国島

沖縄県内の島々で最もドリフトダイビングとして有名なのが、与那国島の西崎(いりざき)です。西崎という岬の先端部分からエントリーして、潮に流されながらハンマーヘッドシャークの群れを探します。

海底遺跡に大物多数!与那国島のおすすめダイビングスポット10選

与那国島は石垣島から飛行機で30分かかる孤島です。八重山諸島の1つですが、石垣島に住んでいる方でさえ、「与那国島だけは行ったことがない」という話もよく聞きます。かつては、海が荒れることも多く、簡単に渡れることができなかったので「渡難(ど[…]

途中は水底も見えないで、視界全体が真っ青な海だけになりますので、ダイブコンピューターでの水深の確認、それにガイドと同じ水深を保つ必要があります。ダイビング中は目標物がほとんどないので、流されている感覚はありませんが、浮上して島を見ると何キロも流されていることがわかります。

  • 慶良間諸島

慶良間諸島の外洋ポイントもドリフトダイビングで、イソマグロやマンタを狙うことができます。与那国島も慶良間諸島の外洋ポイントも、50本、または100本のように本数制限を設けていることが多いので、制限本数に達していない人はあらかじめダイビングショップに相談してみてください。

【慶良間諸島】渡嘉敷島・阿嘉島・座間味島でのダイビング

【慶良間諸島】渡嘉敷島・阿嘉島・座間味島でのダイビング ダイバー憧れの地である慶良間諸島。アクセスするには沖縄本島の那覇泊港から高速船かフェリーで島に行くのが一般的です。高速船は「阿嘉島と座間味島行き」と「渡嘉敷島行き」は船が違うので[…]

船長とガイドが兼用しているようなダイビングショップや、大型のボートで、グループの数が多く、ダイバーのレベルもバラバラのような場合には、ドリフトダイビングを行うのは、現実的に不可能です。

海外

海外でドリフトダイビングを行うエリアは数多くあり、日本人ダイバーに特に人気が高い、パラオやモルディブは基本ドリフトダイビングを行います。世界でNo.1ポイントのアンケートを取ると、かなりの確率で第一位になるパラオのブルーコーナーも、100%ドリフトダイビングです。

  • パラオ

ブルーコーナーは流れるときには、岩を持って魚を見ていられないほど、急流になることがあります。ブルーコーナーで根待ちをして魚を見るときには、基本的にカレントフックを使います。

カレントフックの片方は釣り針状になっていて、外れないように岩に引っ掛けて、もう片方をBCDに接続します。BCDに空気を入れて、凧のように中層に浮かびます。

カレントフックを使うことによって、両手がフリーで使えるため、カメラが扱いやすくなったり、岩を掴んでいなくてもよいので体力を温存できます。また、中層に浮かぶことによってサンゴを傷つけるのを防ぐこともできます。

ブルーコーナーでは、ダイビング終了時に棚の上から離れるときには水底ギリギリにいると、ダウンカレントという下向きの流れに巻き込まれる可能性があります。ガイドは、棚から離れるときには、水深を浅くするように指示しますので、必ずガイドの指示に従うようにしてください。

ドリフトダイビングのまとめ

ドリフトダイビングの魅力が少しは伝わったでしょうか?マンタやサメといった大物に会いたいと思って、ダイビングをはじめた人が多いはずです。大物は沿岸近くに出ることもありますが、より確率が高くなるのは外洋です。外洋では、流れが強いことも多く、ドリフトダイビングで潜ることが一般的です。

ドリフトダイビングは必要なスキルや精神力が備わっていないと、漂流や不測の事故につながる可能性がありますので、ダイビングをはじめたばかりの初心者が行うべきではありません。

しかし、ドリフトダイビングは大物が見られる確率や、どこで見るよりも大きな群れなど、大興奮のダイビングを味わうことができます。ダイビングの本数や経験を高めて、最初に経験するドリフトダイビングでは、しっかりとしたサポートを受け、おとなしめなダイビングに留めて、コツを掴んでから徐々に本格的なドリフトダイビングにチャレンジするようにしてください。

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