前回の記事で、ダイビングスキルの基本編をお伝えしましたが、今回はその基本を使うことによってトラブルを回避できる「応用編」をお伝えします。
ダイビングライセンスを取りたての初心者から、ダイビングに慣れてきた中級者の方にはぜひ知っておいてほしい内容です。もしトラブルが起こったときは、慌てずに冷静な気持ちを保ちつつ、応用編のスキルをいかしてほしいと思います。
目次
ダイビング応用スキル①マスクが曇ったとき

ダイビング前に、きちんと曇り止めをしたにもかかわらず、水中でマスクが曇ってしまうというトラブルが起こる時があります。 特に新しいマスクを使用するときにこのトラブルが起こりやすくなりがちです。また、うっかり曇り止めをし忘れたということもあるかもしれません。
水中で呼吸のたびにマスクが曇ってしまっては、水中景色を楽しめないだけでなく、パニックになってしまい、突然水中でマスクを外してしまい、その次にレギュレーターを口から外しバタつくという状況を何度か目の当たりにしました。
仮にマスクが曇ったとしても、慌てないことです。呼吸ができていれば大事故にはなりません。慌てずに以下の2つの方法のどちらかを試してみましょう。基本編のマスククリアの応用になります。
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わざと少量の水をマスクの中に入れ、レンズの曇りを取る
マスクの下側(頬に当たる部分)を少しだけ顔から離すと当然マスク内に水が入ります。この水をマスクの内側の曇っている部分に当てて洗うようにしてみましょう。
マスク内に水を入れ、下を向くと曇っておる部分に水が当たるはずです。後は頭を横に振ったり、首の体操のように頭を回したりするとマスク内の水が曇りを取ってくれるはずです。
曇りが取れたら、マスククリアをして水をマスクの外に出せば終わりです。また曇れば同じことを繰り返したらいいだけです。そのダイビングはこの方法で問題なく続けられます。
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あえてマスクを外し、水中でこすって曇りを取る
無意識にマスクを水中で取れば危険ですが、冷静さを保てるならば有効な方法です。マスクを水中で外し、そのまま指で曇った部分のこすり曇りを取った後、またマスクをつければ完了です。
当然マスクをつけるときは、マスク内に水が入っている状態ですので、それをマスククリアで外に出せばOKです。1回で水が出きれない場合は2度3度とマスククリアをしたら解決します。
注意すべき点は、マスクを落とさないようにするということです。勢いよく落ちていくことはあまりありませんが、流れがあるポイントなら、マスクが流されていく場合があります。気をつけましょう。
ダイビング応用スキル②ダウンカレントから抜けられないとき

ダイビングライセンスを取ってすぐのころは、ただ海の中にいるだけで楽しく、小魚やサンゴの海を潜るだけでも満足できますが、経験本数が増えてくると、沖に出て大きな魚と出会ってみたいとか、大群を見てみたいと思うのはごく自然なことです。
そのような中上級者向けのポイントでは、時として潮の流れが速くなり、潮が水底の方に流れていく「ダウンカレント」と呼ばれる現象が発生しているところもあります。
ダイビングに慣れてくると、自分の吐いた泡が足元に行く様子を見てダウンカレントだと判断し、そこを避けるように潜ることもできるようになりますし、当然ガイドもそこを避けるようにしてくれます。
しかし、ダウンカレントにつかまってしまい、抜けきれずどんどん水深が下がってしまうダイバーもけっこういます。 判断材料として、例えば水面に向けてフィンキックしても、耳が痛くなり、しょっちゅう耳抜きするようだと、水深が下がっているのでダウンカレントにつかまっていることも考えられます。
このような時も慌てることなく、次のようにしてそこから脱出するようにしてみましょう。
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水面に向けて泳がず、正しいフィンキックを使い、海底と平行に泳ぐ
ダウンカレントが起きている場所からまずは離れることが大切です。無理に水深を上げようとして水面に向かってフィンキックしても、流れに逆らうだけで体力とエアーを消費するだけになってしまいがちです。
そこで多少水深は深く行きますが、まずは上ではなく横に(海底と平行)泳ぎ、ダウンカレントが起きている場所から離れ、その後水深をゆっくり上げていくようにした方が早く脱出できます。
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BCに多めに空気を入れて、浮力を利用する
中性浮力の応用でBCにたくさん空気を入れて、浮き輪状態にして、浮力を利用し水深を上げる方法があります。
ただし、カレントから脱したらすぐにBC内の空気を排気して適正な中性浮力に戻すことが必要となります。 空気は水圧が低いと膨張するので、浅くなればなるほど浮力が増します。そうなれば水中からの急浮上を起こす原因ともなり、減圧症の危険を伴います。 落ち着いて対処することが大切です。
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ダイビング応用スキル③浅瀬で浮くのを回避する

水審が10mぐらいなら中性浮力がとれるのに、3mぐらいになると途端に中性浮力が取れなくなり、水中でバタバタして落ち着きが無くなり、海面に出てしまうダイバーが多くいます。
この場合、浮上スピードが速くなりがちで、体にとってもいいものではありません。また厄介なことに、この場合多くのダイバーが急浮上していることに気が付いていないのです。水面は船が通ることもあるので、いきなりダイバーが水面に浮いてくるとやはり危険を伴います。
1番いい方法は、ガイドから予備のウェイトをもらうことです。ガイドはこうした状況に備えて、あえてウェイトを重めにして潜っています。1kgもらうだけでかなり落ち着くでしょう。
しかし、その余裕がない時はどうしたらいいのか。その場合は手ごろな石を見つけることです。小さめな石ならBCのポケットに入れることもできるでしょう。 それで解決しなければ、やや大きめの石を持つか抱きかかえるようにすれば急場はしのげます。その状態でガイドのところに行けばウェイトをもらうことができるはずです
ダイビング応用スキル④ハンドシグナルへの対応

一緒に潜っているダイバーが、エアーがない等のハンドシグナルを送ってくることも稀にあります。 マンタやハンマーなどの大物が出て、興奮のあまり呼吸が速くなり、終盤にエアー切れを起こす方や、無駄に動き回り、エアーを消費される方等はたまにいらっしゃいます。
たいていはガイドが対応してくれますが、もしあなたにハンドシグナルを送ってきたらガイドが対応するまでの間はあなたが助けなければなりません。慌てずにどうしたらいいのかをきちんとイメージトレーニングしておきましょう。
またごく稀ですが、ガイドがハンドシグナルを送ってくる場合もあります。それは訓練として送ってくる場合もあるでしょう。通常ガイドがハンドシグナルを送ってきたときは、まさかガイドがエアー切れなんておこすことがない、というように考えてしまい、何の対応もしない場合があるものです。
でも実際は何が起こるかわかりません。例えばダイビングタンクの1本が充填不足でエアーが少なく、それをゲストに渡すことはできないため、最初からエアーが少ないタンクで潜っていることもけっこうあるのです。 ですから普段からハンドシグナルを受け取ったらそれに対応する心の準備は持っておくようにしましょう。
以上、「ダイビングスキル~応用編」をお届けしました。スキルを応用できれば、自分の身を守ることもでき、気持ちに余裕を持ってダイビングを楽しむことができます。ごく簡単なトラブルシューティングにもつながりますので、ぜひ知っておいてほしいです。
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