ダイバーに必須のスキル!上手に耳抜きして安全にダイビングしよう

ダイバーに必須のスキル!上手に耳抜きして安全にダイビングしよう

今までにダイビングをしたことがない人が、不安に思うことには、サメに襲われたらどうしようとか、空気がなくなったら死んでしまうとか、ロープに絡まったらどうしようとか、いろいろなことを考えがちです。

その中でも、自分が耳抜きできるかどうかを不安に思い、ダイビングライセンス取得に進めない人がいます。結論を言うと、耳抜きができない人は、99.9%いません。

山に登ったり、高層ビルのエレベーターや飛行機に問題なく乗れる人であれば、意識しなくても耳抜きができているのです。99.9%の人は耳抜きができるといっていますが、それでも耳抜きがしづらい人がいることは確かです。

それは、水は空気よりも800倍近く重く、圧力変化が大きいため、頻繁に自分の意思で、いつでも耳抜きをしなければいけないためです。

水面から1割の圧力変化(1気圧から1.1気圧)は、水中ではわずか1mの深さなのに対して、空気中での1割の圧力変化(1気圧から0.9気圧)は、標高1,000mの登る必要があります。

そのため、山に登ったり、エレベーターに乗ったりするときには、ゆっくりと圧力が変化するため、何もしなくても自然に耳抜きができているのです。ダイビングでは、急激に圧力が増えるので、自分の意思で耳抜きをしなければならないのです。

耳抜きができない人はいないけれど、耳抜きの仕方が分からない人はいます。そこで、この記事では、耳抜きとはどういうものなのかを説明し、耳抜きのやり方やコツについて紹介していきます。

1.耳抜きとは

「耳抜き」という言葉は、ダイバー以外の人でも知っているポピュラーな言葉ですが、ダイビングでの正式な名称は「圧平衡」です。なので、耳抜きとは、耳の圧平衡を意味します。

耳抜きを英語で言うと、「ear cleaning」で、耳抜きをするは「clean my ears」といいますので、もし耳抜きが苦手だと伝えたいときには、「I’m not good at cleaning my ears.」と言っておけばよいでしょう。

人間のほとんどの部分は水のようなもので、水圧が変化しても形や大きさはほとんど変化しません。

しかし、体内にある空間(中耳やサイナス(副鼻腔))は、潜降して圧力が増加すると、圧縮されるため、圧平衡をしないと、痛みや不快感で下に潜ることができません。

無理をして、耳抜きを失敗したまま潜降しつづけると、鼓膜が破れて、激痛とともに冷たい水が中耳内に入ってきて、めまいをおこして、方向感覚を失ってしまいます。

風邪を引いていたり、ひどい鼻炎や蓄膿症であったりすると、サイナスが痛くなることはありえますが、鼻からサイナスに繋がる管は、鼻から耳に繋がる管(耳管)より太くて短いので、耳が痛くないのにサイナスだけが痛くなるということは、ほとんどありません。

ただ潜ると痛くなるのは、耳だけだと思っている人もいるので、サイナスのことを頭の片隅に覚えておくようにしましょう。

他にも、マスク内とドライスーツ内にも空気が入っていることから、圧平衡が必要になりますが、鼻で息を吐くとか、ドライスーツの吸気バルブの操作をすることさえ知っていれば、対処できるので問題ないでしょう。

一年を通して快適にダイビングをしよう!ドライスーツの魅力を徹底解説

一年を通して快適にダイビングをしよう!ドライスーツの魅力を徹底解説 スキューバ・ダイビングというと、最低でも3日以上かけて、常夏の南の島やリゾート地で楽しむものと考える人が多いものですが、実際は関東地方のダイバーが集まる伊豆半島で[…]

耳抜きの仕組みは、潜降することによって、水と中耳の間にある鼓膜が、水圧で体の内側に押されるのを、中耳に耳管を通して空気を送り込むことです。どのような動作で中耳に空気を送り込むことができるかの詳細は、次章に説明していきます。

浮上してくるときには、中耳の空気が膨張しますが、特に意識をしなくても、耳管を通して余計な空気は抜けていきます。潜降するときに、耳管に空気を通すことができたのだから、浮上時も基本的には問題になることはありません。

もし、鼻炎薬などを飲んでいてダイビング中に薬の効果が切れたときには、中耳の空気が抜けなくて激痛が発生(リバースブロック)して、浮上できなくなるので、ダイビング前に耳管を拡げるような薬を飲むことは厳禁です。

2.効果的なダイビングの耳抜き3つの方法

ダイビング中の耳抜きは、主に下の3つの方法を使って行います。理想的な耳抜きはフレンツェル法、またはトインビー法です。耳抜きといって誰もが思い浮かべる鼻をつまんでフッと息を吹き込む方法(バルサルバ法)は、最後の手段と思って下さい。

効果的なダイビングの耳抜き①フレンツェル法

フレンツェル法は、舌の奥の方を上あごに向けて動かすことによって、耳管を開く方法です。無理矢理中耳に空気を送り込まないので、鼓膜を痛めることがありません。

やり方がよく分からない人も多いですが、耳の後ろの方に力を入れてみたり、舌を上げるのではなく、顎の奥の方だけを開くような感覚でやってみるのがコツです。

鼻をつまみながらフレンツェル法をやってみてもよいですが、鼻をつままずに耳抜きができるようになると、一気に水底に向かって泳ぐシュノーケルやスキンダイビング時の耳抜きで重宝します。

効果的なダイビングの耳抜き②トインビー法

トインビー法は、つばを飲むことにより、耳管を動かすことによって、中耳に空気を送り込む方法です。フレンツェル法と同様、無理な力が鼓膜にかからないので、鼓膜を傷めない良い耳抜き方法です。

喉が乾いて、つばが出てこなくて、つばが飲めないという人がいますが、つばを飲めなくても、つばを飲むのと同じ動きをすればよいのです。トインビー法も鼻をつまみながらやった方が、うまく耳が抜ける人がいます。

効果的なダイビングの耳抜き③バルサルバ法

バルサルバ法は、鼻をつまんで息を鼻から出すように吐きますが、鼻がつままれているので、鼻から空気が出ず、耳管を通して中耳に空気が入り込むことにより、耳抜きができます。

耳抜きは、水圧で押されている力と、同じ力で押し返してあげれば良いのですが、バルサルバ法で、やりすぎて力いっぱい空気を送り込むと、必要以上の空気が中耳に入り込むことによって、鼓膜を痛めてしまう可能性があります。

鼓膜がダメージを負っていると、耳抜きすると痛いことが続き、しばらくの間ダイビングが苦痛になってしまいます。

理想的な耳抜きの方法は、フレンツェル法やトインビー法ができるように練習しておいて、抜けが悪いときには、やんわりとバルサルバ法ができるようにしておくと良いでしょう。

3.耳抜きのコツと予防

肩こりや頭痛が酷いと、余計なところに力が入ってしまい、正しく耳抜きができないことがあります。ダイビング前に薬を飲むことは厳禁なので、リラックスできるように耳周りをマッサージしたり、ツボを押したりしておくことも予防策として使えます。

また、耳管を動かしておくために、当日潜る前までガムを噛んでおいたり、潜り始める前に陸上で一度耳抜きをしておいて、両耳ともにバリッとか、キューといった音がするか確認しておくと耳抜きの予防になります。

ほぼ全ての人が耳抜きをすることができますが、耳管の長さや太さには個人差があり、人によっては変な方向に曲がっている可能性もあります。一般的に子供の耳管は太くて短いので、耳抜きが得意な人が多く、成長とともに耳管は長く細くなってくるので、成人になると耳抜きが苦手な人が多くなってきます。

4.ダイビング中に上手く耳抜きができないときの対処法

初心者向けの講習(PADIオープン・ウォーター・ダイバー・コースなど)では、耳抜きができなかったときには、潜降を中断して、耳抜きを再度行い、それでもダメであれば、少し浮上して、もう一度やってみると教わったはずです。

それでも耳抜きができなかったときには、ダイビングを中止するように教わっています。それだけでは、うまく対処できないことも多いので、次の順番に従って、耳抜きをしなおしてみることをおすすめします。

①潜降を中断し、頭を上にした状態で、耳抜きをもう一度やってみる。

空気は水よりも軽いので、上にいこうとします、その力を利用するためにも、頭が上になっていた状態の方が、耳抜きはしやすいとされています。

②別の方法(トインビー法やバルサルバ法)や、抜けない耳を上に向けたり、首を回しながら耳抜きを試してみる。

耳抜きの方法は1つだけでないので、1つの方法ができなかったときのために、他の方法もできるように練習しておくべきです。また、両耳ともに抜けないことは、ほとんどありません。

もし、片方できないときには、抜けない側の耳を上にすると、空気が上にいきやすくなり、耳抜きがしやすくなることがあります。また、首を回しながら耳抜きをすると、ある角度で耳管がまっすぐになり、空気が通りやすくなるところがあります。その角度を覚えておくと、普段でも耳が抜けやすくなります。

③少し浮上して、いろいろな方法で耳抜きを試してみる。

少し浮上することによって、痛みが軽減されるだけでなく、鼓膜が内側に押されている力が少なくなります。強く押されているものを跳ね返すには強い力が必要ですが、押される力が弱くなれば、鼓膜を押しかえる力も少なくて済むということが、少し浮上して耳抜きを試してみる理由です。

耳が痛いからと、水面まで浮上してしまうと、せっかく少しは抜けていたものが、全てやり直しになってしまいます。完全に耳管が塞がっていなければ、意識的な耳抜きをしなくても、少しずつ中耳に空気が入っています。

耳抜きがうまくいかなかったときには、ダイビングを終えて浮上してくると、マスクの鼻の部分に、鼻血が溜まっているのを見ることがあります。特に初心者ダイバーに多く、経験を積んでくると、耳抜きがスムーズにできるようになり、いつのまにか鼻血が出なくなります。

ダイビング後の鼻血の原因は、主に2つあります。1つめは、耳抜きを頑張りすぎて、鼻の奥の血管(キーゼルバッハ部位)が切れたときです。もう1つは、耳抜きに時間がかかってしまい、中耳に空気ではなく、中耳内の気圧を上げるために血液に似た体液が溜まった場合です。

キーゼルバッハ部位は血管が細いので、簡単に切れやすい性質がありますが、出血量は多くないので、ティッシュを丸めて鼻の中に詰めて、鼻をつまんでいれば、出血はすぐに止まるでしょう。血管が切れるので、明らかに血の色をしています。

一方、中耳に溜まった体液は、浮上すると中耳内の空気が膨張して、耳管を通って空気が抜けていく時に、体液も一緒に耳管を通り鼻から外に出てきます。血液と体液が混ざったような色なので、茶色っぽい色のことが多いです。

このときに完全に外に出なかった体液が、中耳内に残り、水からあがったあとも、耳の中に水が残ったような感じがすることがあります。水泳で耳に水が入ったときのように、水が溜まった側の耳を下にして、トントン片足跳びをしても水はでてきません。鼓膜の内側にある中耳にたまった体液なので、外には出てきません。

ただし、自分の体から出てきた体液なので、危険なものではありませんし、数日間は耳が遠いような感じがすることはありますが、徐々に体に吸収されていきます。

この状態で耳鼻科を受診すると、中耳が充血しているので、中耳炎と診断されますが、気にする必要はありません。2週間以上同じ状態で治らない場合には、別の原因がある可能性があるので、そのときには耳鼻科を受診するようにしてください。

ダイビングスキル「耳抜き」まとめ

初心者ダイバーが苦手としている人が多い耳抜きについて、記載してきましたが、仕組みややり方を理解してもらえたでしょうか?回数を潜っていけば、自分のやりやすい耳抜きの方法が身について、まばたきをするように簡単に耳抜きができるようになってきます。

さらに潜り込んでいくと、意識しないでも、オートマチックのような耳抜きができるようになります。それまでは、この記事で上げたようなコツや対策を参考にして、快適にダイビングができるように心がけて下さい。

事前準備で攻略!船酔いを回避して快適なダイビングをしよう!

事前準備で攻略!船酔いを回避して快適なダイビングをしよう! 長い水面移動をしなくても、魚が多いところのすぐ近くでエントリーできるボート・ダイビングや、「潜る・食べる・寝る」だけという夢のような毎日を過ごせるダイブ・クルーズ。 […]

 

最新情報をチェックしよう!