ダイビングで最も重要なスキル!中性浮力を原理からコツまでマスターしよう

ダイビングで最も重要なスキル!中性浮力を原理からコツまでマスターしよう

余計な力が入っていないで、優雅に水中を泳ぐダイバーを見ていると、ダイビングは簡単だと、ノンダイバーの人は感じるものです。

しかし、いざ自分が講習を受けてみると、全然バランスが取れなかったり、水中で停まっていることができず、沈んでしまったり、浮いてしまうものです。

上手なダイバーの条件としていくつか要素がありますが、華麗なフィンキックと共に、完璧な中性浮力が取れることが第一にあげられます。

この記事では、一人前のダイバーになるため、確実にマスターする必要がある、中性浮力についての説明と、中性浮力を取るコツについて説明していきます。

1.中性浮力とは

水に浮く物体のことを「プラス浮力」、水に沈む物体のことを「マイナス浮力」、そして浮きも沈みもしない物体のことを「中性浮力」と呼びます。

英語ではPeak Performance Buoyancy(ピーク・パフォーマンス・ボイヤンシー)と言います。中性浮力の講習のことを、頭文字を取って「PPB」と短縮して言うことがあります。

PADIオープンウォーター・ダイバー・コースなどの初心者向け講習では、中性浮力を取る練習として、フィンピボットやホバリングなどを何度も行います。中性浮力が取れるようになると、無駄な動きがなくなり、楽に水中で行動できるとともに、空気の節約にもなります。

また、浮力の調整が自在にできることによって、急激な浮上や潜降がなくなり、減圧症や肺の過膨張障害の危険性が減少します。逆に中性浮力がしっかり取れなければ、水底に住む生物に悪影響を与えたり、砂を巻き上げることによって、周囲の透明度を悪化させてしまいます。

2.中性浮力の取り方【3つのポイント】

中性浮力を取る上で最も重要になる、ウェイト量と水中での姿勢について説明し、中性浮力を取るコツについて最後にご説明します。

中性浮力を取るコツ①適切なウェイト量

中性浮力を取るのに、水中での動き方やコツを考えがちですが、最初に考えるべきことは装着するウェイト量です。初心者ダイバーに多いのが、適正より重いオーバーウェイトのウェイト量でで潜っていることです。

オーバーウェイトになっていると、常に沈み気味になってしまい、BCDに多くの空気を入れなければ、中層に浮いていることができません。BCDに空気がたくさん入っていると、少し水深が上下しただけで、BCD内の空気が膨張、または収縮してしまい、すぐに浮いたり沈んだりしてしまいます。

5mmのウェットスーツとスチール・タンクで海に潜る場合、小柄な女性ならば、1kgもウェイトをつけなくても潜れるはずです。よほど大柄な男性でなければ、同じく5mmのウェットスーツとスチール・タンクで海に潜るときには、4kgを超えてウェイトをつける必要はないはずです。

5mmのウェットスーツとスチール・タンクでのウェイト量を基本とすれば、アルミ・タンクのときはプラス2kg、ドライスーツのときはプラス2kg、ドライスーツでインナーが厚いときにはプラス1kgと増減します。淡水で潜るときにはマイナス2kgします。

毎週潜りにいくようなダイバーは少数だと思うので、今回のダイビングの装備とウェイト量をログにつけておいて、そのときのウェイト量が重かったのか、軽かったのかといったことをメモしておくと、次回のダイビングのウェイト量の参考に使うことができます。

その他にウェイト量を決めるときには、いくつか考慮すべきことがあります。熱帯域では強い太陽光によって水分蒸発量が多くなり、日本国内の海水よりも塩分量が多くなります。

そのため、より浮かびやすくなりますので、ウェイトは重めにしておく必要があります。また、グアムなどのアメリカ圏では、重さの単位にkgではなくポンドを使います。

1ポンドは450g位なので、4kgで潜っている人には、8ポンドのウェイトが渡されます。8ポンドは約3.6kgになるので、普段より軽めのウェイトしかつけないことになります。

日本国内でも全体的な浅いポイントであれば、ウェイトは重めにした方がよく、逆に全体的に深いポイントで、安全停止のときにも掴まれるロープがあるようなところではウェイトは軽めにするなど、そのときのコンディションに応じた適切なウェイト量を決めるようにしてください。

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中性浮力を取るコツ②前後の重量バランス(トリム)

水中での体制は、流線型を保つように、初心者向けの講習で習ったことを、覚えている人が多いでしょう。体がしっかり横になっていれば、泳いだ時に水の抵抗を、前からあまり受けないことと、フィンキックの力がそのまま推進力になるため、効率が良いことがわかります。

中性浮力を取るときにも、体を水平に保つことは大変重要です。体が立っている状態では、水の抵抗を受けにくいので、すぐに浮き沈みしてしまいます。体が水平になっていると、沈んだり浮いたりしようとしても、体全体に水の抵抗がかかるため、ゆっくりとしか浮いたり沈んだりすることがありません。

そのため、適切なウェイト量で潜ることと共に、体が水平になるよう、バランスを取れるようにすべきです。体が水平になる状態のことを、トリムと言いますが、トリムになるためには、ウェイトの位置や使用する器材を調整する必要があります。脚部に筋肉の少ない女性はどうしても足が浮いてしまうことが多いものです。

ウェイトが下めになる袋付きのウェイトベルトを使ったり、使用するフィンを、みのあるゴムフィンを使うことによって、心を下半身側にすることができ、足を沈み気味にすることができます。

BCDのタンクへの取り付け位置でも重心が変わってくるので調整してみてください。逆に、常に足が沈む場合には、軽いフィンを使ったり、ウェイトベストを使うと重心を上に上げることができます。

数多く潜りこんでいくと、自然に中性浮力を取るようになり、体が立っていても、問題なく中性浮力が取れるようになってきます。ただドライスーツでの中性浮力を取るときには、完全に水平状態で取るのではなく、やや足が下がっていた方がよいとされています。

それは、ドライスーツ内の空気が下半身に溜まってしまうと、主に肩や手首に配置されている排気バルブから、空気を排出することができないためです。

中性浮力を取るコツ③中性浮力で意識すること

浮かびも沈みもしないように浮力を調整したり、水深を上げたり下げたりするためには、BCDに空気を出し入れすることが第一だと思っている人がいますが、最も便利な浮力調整装置はBCDではなく、自分の肺です。

ウェイトが適正であれば、BCDにほとんど空気を入れなくても、呼吸だけで浮き沈みができるはずです。水深が深くなると、スーツが圧縮されて沈み気味になるので、少しはBCDに給気しなければ、中性浮力を保つことができません。

しかし、少ししかBCDに空気が入っていなければ、それほど頻繁にBCDに給排気を操作する必要がありません。なるべくBCDの操作をしないようにして、呼吸だけで浮力を調整してみましょう。中性浮力を取るコツをまとめると次のようになります。

  1. トリム状態を意識する。
  2. 沈むようなら吸う、浮くようならば吐くようにして浮力を調整する。
  3. 吸っても浮かばなければBCDに少し給気。吐いても沈まなければBCDから少し排気。

もし、少し浮き気味だなと思っても、これから深度が深くなるのであれば、わざわざBCDやドライスーツの空気を抜くのではなく、下に向かって泳いだ方が空気の無駄遣いにならないし、これから徐々に浅くなっていくことが予想されるのであれば、早めに空気を抜いていくように、

今後を予想しながら早め早めに行動していくことが、中性浮力を維持するコツです。

人間は何も考えなくても、楽になるように行動するものです。そのため、数多く潜っていると、中性浮力を取っていたほうが楽なので、原理を理解していなくても、潜っていくうちに自然と中性浮力を取れるようになってきます。

そのため、中性浮力を取るには、浮き沈みの原理を知っておくことは重要ですが、あまり考えすぎても大きなプラスはありません。

鉄は水に沈むし、木は水に浮かぶことは、感覚的に誰もがわかっていることでしょう。物体の比重が水より大きいと沈み、比重が水より小さいと浮かびます。水の比重は1(1リットルの水は1kg)なのに対して、鉄の比重は7.85なので鉄は水に沈みます。

一方、木の比重は、種類や産地によって異なりますが、おおよそ0.3~0.9のものが多いので、水に浮くことになります。つまり、ダイバー(身体と器材全体)の比重が1になれば、淡水中では中性浮力になります。

ちなみに海水は、水に塩が溶けているため、比重は1.03になるため、海水のほうが浮かびやすくなります。わずか0.03の比重の差ではありますが、体重60kgの人であれば、2kg近くの浮力差が発生するのです。

他にも、ダイビングの前後でタンクの重量が変わってくるので、ダイビングの後半では浮きやすくなります。満タンのタンクと空の10リットル・タンクの重さを比べると、2kg以上の違いがあります。

このように浮力を考えると様々なことがあり、全てを考えながら潜ることは、どれだけベテランになったとしても不可能です。

しかし、最初のうちに中性浮力の意識を持って潜っているのと、ただ惰性で潜っているのでは、上達のスピードがかなり変わってくるので、意識せずに中性浮力が取れるようになるまでは、ここまでに書いてきたコツを考えながら潜ることをおすすめします。

また、中性浮力を極めたいという人が練習するためには、アドヴァンス・オープン・ウォーター・ダイバー・コースでPPBをアドベンチャー・ダイブに選んだり、PPBのスペシャルティ・コースに参加する手段もあります。

中性浮力のまとめ

この記事では、ダイビング中に中性浮力を取ることの重要性や原理、それに中性浮力を取るためのコツについて説明してきました。中性浮力のスキルは、フィンキックと並んでダイビングのスキルの中で、1・2を争うほど重要なスキルです。

ダイナミックなポイントに潜るときにも、中性浮力は必須なスキルですし、海外で潜るときには、ダイビングスキルのチェックとして、中性浮力をマスターしているかを見極められます。

海外では、日本以上に環境意識の高い地域が多く、中性浮力がしっかり取れないようなダイバーは、サンゴを壊してしまうことから、サンゴのきれいなポイントには連れて行ってくれません。

また、崖のようなドロップオフの地形のポイントには、下まで落ちてしまう危険性があることから、別のポイントに移動させられてしまいます。

今後のダイビング人生を素晴らしいものにするには、中性浮力は必須のスキルになりますので、意識的に中性浮力を取りながら潜ることを心がけて下さい。

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