【中級編】ダイビングの楽しみが広がる!水中写真 第6回マンタと地形の撮り方

【中級編】ダイビングの楽しみが広がる!水中写真 第6回マンタと地形の撮り方

水中写真その5では、「被写体にどこまで寄るのか、どこまで引くのか」について、作例を用いて詳しくお伝えしました。水中写真を楽しみ、かつ上達を目指しているあなたには、参考になることもあったことだと思います。

その6では、「特定の被写体の撮り方」というテーマで、具体的に被写体を1つに絞り、「その被写体をきれいに撮るにはどのようにしたらいいのか」についてお伝えします。これからはできる限り多くの被写体について作例を見せながら詳しくお話ししますので、ぜひ参考にしてだければ幸いです。

今回は2つの被写体についてお伝えします。

1.マンタの撮り方

最初にお伝えするのは、ダイバーに大人気の魚「マンタ」です。この魚に水中で会いたいと考え、できることならきれいに写して思い出の1枚にしたい、と考えられている方も多いのではないでしょうか。そのコツをお伝えします。

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マンタの撮り方①当然のことながらルールを守る

マンタを撮影する場合、そのポイントでのルールを守ることです。石垣島の「石崎」など、普通はクリーニングステーションと呼ばれる場所にやってくるマンタを狙います。

マンタはクリーニングを目的にそこに来るわけで、ステーションで落ち着きたいのです。それをダイバーが邪魔をしてしまったらマンタはそこで落ち着けるはずがなく、逃げてしまいます。

石垣島でも厳しいルールが決められており、ダイビング前のブリーフィングで説明されるはずです。

1.マンタに近寄らない
2.マンタのお腹に泡を当てない
3.追いかけない
4.マンタより高い位置にいない

写真撮影に夢中になり、気が付いたら浮き上がっていたなどはお話になりません。他のダイバーの迷惑にもなりますので絶対に守りましょう。

ルールを守っていると、マンタから近寄ってくることもよくあります。これは全く問題がありません。手を伸ばしたら触れることができるぐらいの距離までマンタから来てくれることも珍しくはありません。その時はラッキーです。大迫力のマンタを写してくださいね。

モルディブやパラオでも同様のルールがあります。日本人の多くは守りますが、西洋人はほとんど守りません。それでマンタが逃げて嫌な思いをしたこともありました。しかし、だからといって同じ行為をすることはよくありません。また接近してくることもあるので、それをじっと待つことがいい写真を撮る近道です。

マンタの撮り方②水中カメラの機材を考える

ここでは中級者以上の方に焦点を当ててお伝えします。

まず用意していただきたい機材は、「外付けストロボ」と「ワイドレンズ」です。通常のコンデジでも撮れますが、そのレンズで全身を撮ろうとすると、マンタからある程度距離が離れなければなりません。そうするとストロボの光が届かず、青っぽい写真になってしまいます。

水中カメラ①コンデジをお使いの方

ハウジングの上からレンズをねじ込むように装着する「ワイドコンバージョンレンズ(ワイコン)」を準備するのがおすすめです。

水中カメラ②一眼タイプのカメラをお使いの方

画角の広い「20mm以下のレンズ」、できれば「15mmクラスのフィッシュアイレンズ」を使ってほしいです。

これらを使うことで、マンタが近寄ってきたときに、大迫力できれいな写真が撮れるはずです。とはいえ、相手は自然ですから、そうそううまくはいかないときもあります。フィッシュアイレンズを付けているときに、マンタが近づいてくれないこともやはりあります。

その時は、マンタがイワシのように小さくしか撮れません。ワイコンの場合は、レンズを外すと標準レンズになりますので大きく撮れますが、フィッシュアイレンズの時はそれができません。いい勉強をしたと思って次回に期待しましょう。

水中写真は「できるだけ寄って撮ること」が基本です。それは大きなマンタであっても同じです。青被りしない距離で、ストロボの光がきちんと当たる距離まで来るのを待って写すことが大切です。

マンタは基本、「見上げて写す」ことが多いですので、光が弱い内臓ストロボやストロボなしでの撮影は、シルエットの写真になり、マンタが真っ黒に写ってしまいます。狙ってシルエットにしない限りは、ストロボの光をマンタ全体に当てるように心がけましょう。

マンタの撮り方③水中カメラのシャッターを押すタイミングを考える

マンタの場合、相手が近寄ってきてくれたタイミングを見てシャッターを押すことが大切です。なぜなら、ストロボが1度光ると次に光るための充電に時間を取られるからです。カメラは連写ができたとしてもストロボはできません。どうしてもこの「リサイクルタイム」が必要となるのです。

まだマンタが遠い段階でシャッターを押したならば、1番接近したベストのタイミングでストロボの充電が間に合わず、チャンスを逃してしまうということもよくあるのです。当然のことながら、マンタは止まってくれません。タイミングを考えてシャッターを押すようにしましょう。

マンタの撮り方④2枚以上のマンタが出てきた時は

運がいいときには、マンタが2枚、3枚と複数で登場することもあります。そんな時は1枚だけではなく、同時に複数が写り込むように狙ってみましょう。

ワイドレンズの特徴には、以前お伝えしたように「遠近の誇張が大きい」ことがあげられます。これをうまく使うことでいい写真が狙えます。

ポイントは「大きさに差をつけて写す」ことです。マンタを横並び風に撮るのではなく、手前のマンタと奥のマンタというように、大きさに差をつけてみてほしいのです。そうすると、ワイドレンズの特徴が生かされて、手前のマンタはより大きく、奥のマンタはより小さく誇張して写りますので、奥行きのある写真を撮ることができるのです。

このスキルはマンタ以外の魚でも応用することができますので、ぜひ覚えておいてください。

2.水中写真の地形の撮り方

筆者が大好きな水中写真に地形があります。特に洞窟の中に差し込む太陽の光は幻想的かつ神秘的です。また、穴から見る外洋は真っ青で吸い込まれるような感覚さえ感じます。そこで、洞窟探検的なアドベンチャー気分も味わえ、太陽の光の差し込みに癒される「地形の撮り方」についてお伝えします。

国内では宮古島周辺や与那国島、本島北部から見える伊江島に多くの地形ポイントがあります。ここでお伝えしたことをぜひ実践してほしいと思います。

水中写真の地形撮影①マンタと同様ワイド系のレンズを準備する

水中の洞窟にも様々な種類の穴があり、中には特殊なスキルを必要とするポイントもあるようですが、ここではレジャーダイビングで潜れる地形ポイントでの話に絞ってお伝えします。

洞窟に差し込む太陽の光や、洞窟の出口の穴の形等、地形ダイビングでの被写体は豊富ですし、よほどのことがない限り、魚のように「前回はいたけど今回はいなくなった」ということはありません。

地形が変わるということは基本ありませんが、それでも沖縄では「大きな台風で大しけになった」後に潜ると、岩が違うところに動いていたり、周囲の風景が変わっていたりすることがあります。さすがに大きな穴が埋まるような経験はありませんので、潜ることができたら前回の反省を生かして撮り直すことも可能です。

地形を写す時、迫力がありダイナミックな様子を切り取るために用意してほしいのが「ワイド系のレンズ」です。できれば「フィッシュアイレンズ」を準備してほしいです。太陽の差し込みを撮るときは、できれば「上の穴から海底まで届く光」を全部写してほしいですからね。できるだけ広い風景が撮れるレンズを持っていきましょう。

水中写真の地形撮影②おすすめは「ストロボ」なしで撮影する

洞窟内の撮影や太陽の差し込みを写す時は、ストロボを使わないことをおすすめします。コンデジなら強制的にストロボの発行を禁止する設定にしておくことがいいでしょう。一眼を使っている方ならストロボのスイッチはオフにするか、ストロボを外して潜ってもいいと思います。

確かに、ハタンポやアカマツカサのように、暗い場所を好む魚も群れていますので、それを写したいならストロボは必要です。しかし、洞窟内でストロボを発行させて写すと、あまりきれいでない岩肌ばかり写ってしまい、どうもイマイチな写真が撮れることが多いのです。また、海が荒れたときに舞い上がった砂等が岩の壁にはけっこう多く、それらがストロボの光を反射してハレーションを起こすことも多いのです。

このような理由から「太陽の差し込み」や「穴から見た外洋」等に絞り、その写真を撮ることに集中してみてはどうでしょうか。これならばストロボは不要です。最初から使えないように設定して潜りましょう。

水中写真の地形撮影③水中カメラのISO感度は上げておくこと

洞窟内は肉眼ではよく見えていても、写真を撮ろうとするとけっこう暗さを感じるものです。普段の写真を撮るときよりも、ISO感度は上げておくことをおすすめします。具体的な数値はポイントの明るさによって変わってきますので、400とか800とか言い切ることはできませんが、目安として「手振れしない感度」を目安に設定しておけば問題ないでしょう。

設定に慣れているなら「露出補正」機能を使うこともいいでしょう。洞窟の撮影時に気を付けることとして、「暗い部分をできるだけ少なめにする」ことが大切です。それによって真っ黒の部分が画面上で減り、黒く潰れてしまった写真になりにくくなります。

それでもどうしても明るい部分が少なくなる時には、「露出補正」を使って明るさを調整しておけば便利です。もちろんこの場合は「プラスに補正」をしておきます。これにより、写真を明るく写すことが可能になります。最近では撮影後にソフトを使うことにより、きれいに仕上げることもできますので仮に露出補正をしてなくても大きな問題はありません。

水中写真の地形撮影④お気に入りの光や角度を探す

天井に空いた岩の切れ目から差し込む光は、実に様々な表情を見せてくれます。時にゆらゆらとオーロラのように見えることがあれば、まっすぐ差し込むスポットライトのように見えることもあります。感動が伝わる様に光の差し込みをどう写すかを意識しながらいろんな角度から写してみてください。

また、地形を見る場所を変えることにより、同じポイントであっても違った表情を見せてくれるものです。ダイビング中、場所を変えながら写してみて、お気に入りの場所を探してみましょう。横から撮ってもよし、煽って撮ってもよしです。そこには「光と地形が織りなすオブジェ」が見られているはずです。あなたの好きなように切り取って写真を撮ってください。

水中写真の地形撮影⑤ダイバーを入れると雰囲気が変わる

地形の写真はもちろんそれだけを撮っても十分きれいなのですが、穴の大きさやダイナミック感を演出するためにダイバーを写し込むと雰囲気が違う写真が撮れます。

バディにモデルになってもらってもいいですし、ガイドがモデルになってくれることもよくあります。また、意外に面白い効果があるのが「排気した泡」で、洞窟内に泡が写ると不思議と広がりを感じる写真になります。ぜひ使ってみてください。

【中級編】水中写真の第6回まとめ

今回は「マンタ」と「地形」の撮り方についてお伝えしてきました。2つの撮り方に必要な物として、ワイドレンズを装着することがポイントです。2つの撮り方の違いとしては、マンタはストロボを基本的に使い、地形はストロボを使わないことです。ここはしっかりと押さえておきましょう。

次回以降も「被写体別の撮り方」をお伝えしていきますので、楽しみにしておいてくださいね。

【中級編】ダイビングの楽しみが広がる!水中写真

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