【中級編】ダイビングの楽しみが広がる!水中写真 第11回ストロボやライトを使おう

【中級編】ダイビングの楽しみが広がる!水中写真 第11回ストロボやライトを使おう

前回の水中写真10では「ダンゴウオの撮り方」についてお伝えしました。ダイバーに人気のダンゴウオの魅力や撮り方を分かってもらえたでしょうか。寒い海でのダイビングになりますが、ぜひチャレンジしてみてくださいね。

そのダンゴウオの撮影でも、もちろん使うことが必要な「ストロボやライト」について今回はお伝えします。内臓ストロボなら何も考えなくてもシャッターを押せば光るだけなのですが、外付けストロボとなるとそうはいきません。

セッティングはもちろんこと、被写体に光が当たるように微妙な調整も必要となってきます。使い始めの頃は「面倒くさい」と思うこともあるでしょうが、ストロボやライトの使い方をマスターしたら、写真が大きく変わりますのでその使い方と効果を覚えてほしいと思います。ぜひ参考にしてください。

1.水中写真でストロボは必要?

結論からお伝えすると「必ず必要となります」といって過言ではありません。通常の撮影では「ストロボがないことはありえない」と言えます。そのくらい重要なアイテムだと理解してほしいのです。

水中では太陽の光が吸収されていきます。具体的には赤色から少しずつ吸収されていくのです。ストロボなしで写真を撮ると、全体的に青っぽい写真に仕上がる「青かぶり」という現象が起きてしまいます。

これではサンゴや魚の本来の色が表現できません。本来の色を出すために、人工的な光で補う必要があるのです。その光はできるだけ太陽の光と近い発色のものがのぞましく、ダイビングで使用されるストロボやライトは色温度が太陽光に近いものになっているのです。

2.水中写真のストロボ設定は「強制発光」にする

ここではデジカメに内蔵されているストロボでお話しします。ストロボの設定を「オート」にすると、ストロボが光るときと光らないときが出てきます。これはカメラが「明るいか暗いか」を自動的に判断してストロボを光らせるかどうかを決めているからです。

しかし、水中では例え明るい海であっても生物の本来の色を出すために必ず「ストロボが光ってもらう」ことが大切になります。光らなかったら「青かぶり」写真になってしまうことは1でお伝えした通りです。

必ず「強制発行」モードに設定してください。言い換えるなら、シャッターを押すたびに必ずストロボが光らなくてはならないということです。ダイビング前の陸上で設定しておきましょう。

3.水中写真でストロボを使うと、白いゴミが写るのはなぜ?

もし、内臓ストロボだけで撮影されているのなら、マリンスノーとも呼ばれる「白い浮遊物」が画面に写り込んでしまうお悩みを持たれている方も多いでしょう。これは「ハレーション」と呼ばれている現象です。

水中の浮遊物にストロボの光が反射していまい、それが写ってしまうことから起こります。中にはハレーションを起こすことを避けるためにノーストロボで写されている方もいるかもしれませんが、それでは「青かぶり」してしまい、生物本来の色を出すことができなくなってしまいます。

では、ハレーションを起こさないようにして生物本来の色を出すようにするにはどうしたいらいいのでしょうか。その解決策が、これまで何度もお伝えしてきたと思いますが「外付けストロボの使用」なのです。

外付けストロボとは、ダイビングなら「水中専用の単体のストロボ」です。現在多くの水中写真を楽しまれている方が「SEA&SEA」か「イノン」製の水中専用ストロボを使用しています。筆者もワイド撮影用に「SEA&SEA」製のストロボ、マクロ用に「イノン」製のストロボを使用しています。

こうした外付けストロボをカメラ本体から離して発光させることで、レンズと発光部の距離を離すことができます。これによってハレーションをかなり軽減することができるのです。カメラとストロボは、ハウジングと「アーム」という部品でつなぎ、光ファイバーケーブルを使って内臓ストロボの光を外付けストロボに伝えることで光るようになっています。

水中写真のスキルアップには「外付けストロボ」の使用は必須です。ぜひこの機会に準備されてください。

4.水中写真で2灯のストロボを使っている方もいる?

実は筆者もそのようにしています。ワイドもマクロも両方とも1台に付き2灯のストロボを使用しています。これを「多灯撮影」といいます。外付けストロボの使用に慣れてきたら、ぜひ挑戦してほしい撮影方法です。

ではどうして多灯撮影をするのがいいのでしょうか。その理由は「影を消す」ことにあります。ストロボ1灯で光らせて写したとしたなら、光の反対側には必ず影ができることは理解できますよね。月で例えるなら、太陽が当たる部分は明るいですが、当たらない部分が影になり暗くなってしまいます。

サンゴや魚を写しても同じで光が一方向から当てると明るく見える部分と暗くなってしまう部分ができてしまいます。被写体の両側から光を当てると影ができにくくなり、魚の顔が半分だけ暗くなるということはほぼなくなるわけです。これが多灯撮影の1番のメリットなのです。

外付けストロボに慣れてきたなら、経費はかかってしまいますが多灯撮影にもチャレンジしてみてほしいです。写真の仕上がりが大きく変わることは間違いありません。

5.水中写真でストロボはどんな場面でも必ず発光させる?

答えは「NO」です。これは水中写真7でお伝えした「洞窟などの地形撮影」では、差し込む太陽の光と穴から外洋を見たときの海の青さを出すためにストロボを使いません。また、効果として「あえて青かぶり」させたいとき、具体的には浅瀬の青いスズメダイを写す時などにストロボを使わずあえて自然光で写すことがあります。

外付けストロボなら、水中でも簡単にスイッチを切り替えることも可能です。いろいろ写してみることで、自分が表現したい世界を撮ることができるようになると思います。どんどん外付けストロボの操作に慣れていきましょう。

6.水中写真はストロボではなく、水中ライトだけでも撮れる?

様々な条件が出てきますが、答えとしては「YES」です。ライトで撮影する場合は「光量」が大切になります。ストロボはシャッターを押す一瞬だけ強い光量が発生する仕組みになっていますが、ライトの場合は常時一定の光量を発生させるようになっています。

一昔前までは、水中撮影で使えるライトは、テレビ局が使うような特殊な物で大変大きく高価なものしかありませんでした。しかし、近年では光量が強くて十分な量があり、長時間点灯できる小型で手頃な値段のものも増えてきていますので、ライトを使って撮影しているダイバーも増えています。

これからはアクションカメラの普及により動画撮影がさらに増えてくるでしょうから、ライトがダイビングではマストアイテムになってくると予想できます。

7.水中写真を上手くなるために、水中ライト選びで注意すること

水中写真を撮らないダイバーでも水中ライトをお持ちの方は多くいらっしゃるでしょう。ですが今お使いの水中ライトが撮影に適したものであるかはわかりません。撮影に使うライトは撮影に適したものを選ぶ必要があります。ここでは撮影用のライトを選ぶ際の注意点をお伝えします。

水中ライト選びのポイント①光の色

まずは「光の色」が大切になります。以前はいわゆる「豆電球」が光るタイプの水中ライトが主流でした。そうするとオレンジっぽい色が光ることは子供の頃の理科の実験の経験で思い出す方も多いでしょう。こうした光の色のことを「色温度」と言います。

撮影に適しているライトの色温度は太陽の光に近い色を出すライトです。この色温度の単位をケルビンと言います。写真の世界では、太陽の光は5500K(ケルビン)に設定されていますので、ライトも5500Kに近い色温度のライトを選ぶことがとても大切になります。

水中ライト選びのポイント②点灯時間

もう1つは「点灯時間」です。撮影用の水中ライトは基本的には常時点灯されたままの状態になりますので、短時間でバッテリー切れを起こすようなライトでは使えません。バッテリー容量や点灯時間等は説明書やメーカーのホームページに記載されていますので確認してから購入することが必要です。

最近ではネット通販でかなり安価なライトも多く販売されています。一概に安い商品はダメだということはありませんが、壊れやすいものや、水中でスイッチが押せないなどのトラブルが多いことも実際によく目にします。リサーチはしっかりされることをおすすめします。

筆者は撮影専用で水中ライトは使いませんが、ダイビングの際は「イノン」製の水中ライトを携帯しています。

8.水中写真におけるデジカメの設定はどうしたらいいの?

ライトだけで撮影するときはストロボを使いません。外付けストロボを使用している場合はそのスイッチをオフにしておくか、ストロボを外しておきましょう。

デジカメ本体の設定ですが、おすすめは「発行禁止モード」にしておくことです。こうしておくことで、誤作動によるストロボ発行はなくなります。

もう1つ注意することは、ISO感度を高くすることです。ストロボの光よりもライトの光はかなり弱いということを知っておいてほしいのです。光の弱さを、感度を上げることによって補うようにするときれいに撮れますので忘れないようにセットをしましょう。

9.水中写真において水中ライトでの撮影長所はどこ?

外付けストロボは慣れるまでストロボの向きが被写体に向いてなくて、いわゆる「明後日の方向」に光が当たり当たってほしいところが暗くなるということが誰にでもあります。ここに慣れるまでにしばらく時間がかかるのが普通です。

しかし、ライトの場合は、写す前にライトを被写体に当ててから撮影するので、被写体にライトが当たっていないというミスはなくなるはずです。仮に当たっていなかった場合、液晶やファインダーを見たら暗くなっているはずですので、すぐに修正ができます。ここは大きな長所です。ライティング確認はストロボに比べるとはるかに楽になります。

10.水中写真では色々な撮影方法を楽しんでほしい

SNSやダイビング写真のホームページで「スポットライト」として被写体だけにライトを当てて周囲を暗くして撮影している写真も最近よく見かけます。マクロ撮影でよく見かけますが、細くした光を当てることによりそうした写真が撮れます。実際にやってみても面白いでしょう。

またライトだけでなく、ストロボとライトを併用して撮影する方法もあります。ライトの光を被写体の後ろ、横など変えてみることによって写真が変化していくのがわかるところにライト撮影の奥深さがあります。ぜひ試してみてください。

【中級編】水中写真の第11回まとめ

今回は水中撮影で必須アイテムともいえる「ストロボ」と「ライト」についてお伝えしました。光が吸収されてしまう特殊な環境である水中では、ストロボやライトはかなり重要な機材だと私は思います。光の当て方に工夫してぜひ「水中の光の魔術師」を目指して楽しまれて下さい。

次回は「ビーチ撮影」に関する内容でお伝えする予定です。楽しみにしておいてください。

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