【初級編】ダイビングの楽しみが広がる!水中写真第1回 水中写真の始め方
ダイビングをスタートし、美しいサンゴ礁、カラフルな小魚の群れ、表情豊かな魚たちを見ていると、「写真を撮ってみたい」と思ったことはありませんか。 「海の中にはこんなに素晴らしい世界がある」ことを、自分が写した写真で友人や家族に伝えたいと思ったこともきっとあるでしょう。
また、同じダイビングツアーに参加していたダイバーが、楽しそうに写真を撮り、ログ付けの時間にその写真を見たときにはきっと「私も撮ってみたい」と思いませんでしたか。 そこで、今回から数回に分けて、水中写真シリーズをお伝えしていきます。
目次
1.水中写真に対する姿勢や心構えとは
水中写真を始める前にぜひ知っておいてほしいことがあります。それは水中の自然に対する姿勢や心構えです。ある意味テクニックよりも大切なものだと私は考えています。 しかし、これはあくまでも私の考えです。
絶対にこれが正解だということではありません。「私は海に対してこう向き合っている」とか、「このような写真を撮っている」というものです。このような考えで写真を楽しまれる方が増えてくれたらいいなあと思っています。
1.1水中写真で何を撮りたいの?
水中には魅力的なものがたくさんありますよね。きれいなサンゴ礁、迫力ある魚の群れ、カラフルなウミウシ、青い海に差し込む太陽の光など、見ているだけで癒される、その世界を写真に撮りたいと思うのは自然なことだと思います。
水中ではほとんどの場合、体は浮いている状態です。力が抜けきっとリラックスしているでしょう。まさに自由な状態です。今の気持ちで「きれい」とか「すごい」、あるいは「不思議」と思ったものを自由に写せばいいと思っています。 感動した瞬間や心が動いたときにシャッターを押せばいいのです。ただし生物を傷つけることはやめてください。私たちと同じ命ですからね。
その写真には「あなたの心に何かが触れた瞬間」が写っているはずです。そのような 写真は、きっと誰かに見せたときに相手の心も動かすはずです。 そのような「思いが込められた写真」が人から人へ伝わり、最終的には海を大切にする方が増えてくれたらいいなと思いつつ、私は水中写真を楽しんでいます。
1.2水中写真の被写体はいっぱいある
ダイビングを始めたころは、あれもこれも珍しいものだらけで、きっと写真もあれもこれも追いかけまわしているのではないでしょうか。私もそうでした。実に落ち着きのないダイバーだったに違いありません。
少し慣れたころに、「珍しい生物(レアな生物)探し」にハマってしまいました。あまり見かけることがない珍しいものだけを探して写真に撮ることだけ追求していたのです。今思うと、何ともったいない時間を過ごしてしまったのかと悔いが残ります。
レアな生物も運よく登場したらもちろん写せばいいのです。でもそれが出なくとも、目の前には素晴らしい「海の日常」が広がっていて、毎日魚たちが暮らしているのです。 そんな魚たちの生活や行動をそのまま写すことできっとあなただけの世界観が詰まった写真を撮れると思います。
魚の捕食、求愛、縄張り争い、共生等、生活場面はたくさん見られます。 また、海のきらめき、イソギンチャクの色、花のように見えるポリプなども素晴らしい被写体です。日常をあなたの目で切り取ってみてほしいのです。
1.3海の生き物に「お邪魔します」の心構え
ダイビング歴が長くなると、海でプロカメラマンの方にお会いすることもあります。彼らが口にする言葉で印象的なものがありました。
「人間は海には住めないから、本当は入ったらいけない世界なんだ。でもタンクがあれば水中に潜ることができる。でもそこは人間の世界ではない。だから魚が住んでいる所に(お邪魔します)という気持ちで潜ることが大切」
この気持ちがあれば、生物を傷つけてまで写真を撮ろうという気持ちはなくなるはずですね。
1.4水中写真のシャッターチャンス
海の中では常にまわりをよく見ておきましょう。何が起こるか、何が登場するかわかりません。突然その時はやってくるものです。
その瞬間が来たら、シャッターチャンスを逃さずに写真を撮ってください。「次回、あの場面があったら撮りたい」と思って、それから10年以上チャンスが訪れないこともよくあるのです。あなたの目の前で起こっていることや、目の前にいる生物とはもう会えないかもしれません。
1.5水中世界に興味を持つ
ダイビングを続け、何回も海に潜っていると、ただ「きれい」「かわいい」といった気持ちから、「なぜこんな行動を取るの?」等に変わり、その生物に興味を持つことでしょう。 同様に、お気に入りのポイントができてくると、海そのものが好きになるはずです。実はこれが水中写真上達の近道でもあるのです。
相手を好きになることがとても大切です。魚やクラゲ、地形等、それらの魅力を見つけてください。 人間と同じです。どの角度でどんなポーズをしているときが魅力的でしょうか?水中でも全く同じです。ダイビングの経験がない人に海の魅力が伝わるような写真はどう撮ればいいか、意識することをおすすめします。
1.6海の生き物を尊重する気持ち
いい水中写真を撮るなら、水中生物と仲良くすることが大切です。少なくとも嫌われてしまうといい写真どころか、写真を撮ることすらできません。先ほども触れましが、海は本来人間が住めない場所です。 そこにお邪魔しているわけですから、水中では彼らが全てにおいて優先されるべきです。
写真を撮るために、彼らの巣穴を壊したり、恐怖感を与えたりすると隠れてしまったり、最悪の場合そこから姿を消したりすることも珍しくないのです。 一定の距離を保つことや、警戒感が無くなるまで動かずにじっと待つようにしたら、生物がダイバーに気を許すこともあるのです。
そうなれば、きっとあなたの目の前で、彼らの日常生活を披露して、すごい瞬間を見せてくれることでしょう。そうなればいい写真が撮れるのも時間の問題です。
2 水中写真を始めるまでの準備
2.1初心者でも簡単に水中写真は楽しめる
かつて水中写真は、ダイビング上級者向けのものでした、というのも、以前はカメラの知識がかなり必要とされ、自分のダイビングだけで精一杯の初心者の方が、水中でダイビング以外のカメラにまで気を遣えるようになるまでには、一定のレベルが必要と考えられていたからです。
しかもカメラだけではなく、ストロボ操作等も必要でしたし、水中写真を撮るための器材一式はかなり重かったため、高いダイビングスキルが必要とされていたのです。
しかし「コンパクトデジカメ」の登場でその考え方が一新されました。小さなボディをコンパクトなハウジングに入れ、シャッターを押すだけできれいな水中写真がダイビング初心者から簡単に撮れるようになりました。 ストロボも内蔵のもの使えばいいので、手軽に写せます。
あるときからは、体験ダイバーや講習生ですらカメラを片手に、実にきれいな写真を撮っているのを目の当たりにしてビックリしたこともありました。 ですので、水中写真=上級者だけができる、という考えは一切なくなり、ダイバーならだれでも楽しめるものになりました。
2.2水中写真と陸上写真での器材の違いはどこだろう
最近では、防水や耐圧のために、必要なハウジングすらいらないというカメラも登場してきました。機材の技術の進歩は素晴らしいです。
ですが、もしダイビングをある程度続けていこうというダイバー、例えば年に数回は必ず潜ろうと決めているダイバー、またはそれ以上潜られる方ならば、ハウジングに入れて水中に持っていける器材を買われることをおすすめします。
ダイビングを始めた当初は、水深の浅い海でも十分楽しむことができます。見るもの全てが珍しく、陸上では見ることができない世界が目の前に広がっているわけですから。 水深の浅い海ならば、太陽の光も十分届きますので、見た光景そのままの写真を撮ることができます。
しかし、ダイビングを続けていくと、もう少し深いところにも必ず行ってみたくなります。ライセンスのランクにもよりますが、レジャーダイバーでアドバンスまで取得していれば、原則40mまでは潜水は可能です。
水深が深い海には、そこでしか見ることができない珍しい魚やシーンがやはりあるのです。深めの水深で写真を撮ろうとするなら、その水深に耐えられるハウジングが必要となりますし、太陽の光は深くなるとかなり弱くなりますので、ストロボが必要となります。
太陽光は水深が深くなるにつれて、赤色から水に吸収されていくため、全体的に青っぽくなっていきます。これは「青かぶり」と言われる現象で、海の色が青く見えるのもこの原理があるからです。
水深が深いところでは、肉眼ではカラフルに見えていても、カメラで写すと全体的に青みがかった写真になってしまいます。そのためきれいに撮るにはどうしてもストロボが必要となってくるのです。 ですから、ストロボの付いたカメラ、または水中で使えるストロボをそろえなければなりません。
2.3初心者におすすめな水中カメラの器材は?
最初はお持ちの「コンパクトデジカメ+ハウジング」を用意してもらえればいいと思っています。コンデジでもビックリするくらいの写真を撮る方もたくさんいらっしゃいます。あえて新しい機材を購入する必要はないでしょう。
しかし、お持ちのコンデジには合うハウジングがない場合や、そもそもコンデジを持っていない方は購入を検討されると思います。 その時は「陸でも海でも使う頻度」を考えてコンデジを買うか、ミラーレスを含む一眼のカメラを買うかを決められたらいいと思います。
すでに一眼をお持ちの場合は、それをいかしてカメラに合うハウジングを購入されたらいいでしょう。 ただし場合によっては水中用の「外付けストロボ」が必要となる場合があります。水中カメラの器材はお金がどうしてもかかります。
ずっとダイビングを続けていくのならいいのですが、そうでない場合はこの出費が無駄になってしまうこともあるので、最初はできるだけお金がかからない方法を考えることがいいと思います。
次回の第2回では「水中写真の撮り方」について、初心者の方を中心にした内容でお伝えしていきます。
【初級編】ダイビングの楽しみが広がる!水中写真第2回 撮り方のコツ 第1回水中写真の初級編では、水中写真を撮る前の心構えと、どんな器材をそろえればいいのかということを中心にお伝えしてきました。第2回水中写真の初級編では、水中写真を撮る[…]