【中級編】ダイビングの楽しみが広がる!水中写真 第9回ウミウシの撮り方2

【中級編】ダイビングの楽しみが広がる!水中写真 第9回ウミウシの撮り方2

水中写真8では、ウミウシの撮り方についてかなり詳しくお伝えしました。海の宝石とも呼ばれているウミウシの魅力やきれいに撮るコツなどが理解してもらえたかと思います。

【中級編】ダイビングの楽しみが広がる!水中写真

【中級編】ダイビングの楽しみが広がる!水中写真 第8回ウミウシの撮り方 前回は「クマノミの撮り方」について、詳しくお伝えしてきました。水中写真8の今回は「ウミウシの撮り方」についてお伝えしていきます。 ウミウシは「海の宝石」とも呼ばれ、[…]

今回のその9では、「本州の海に住むウミウシ」と「沖縄の海に住むウミウシ」を実際に紹介しながら、撮り方やシチュエーションについて掘り下げてお伝えします。ぜひ参考にされて、あなたなりのウミウシの魅力をぜひ写してみてください。

1.本州の海に住むウミウシ

本州の海に住むウミウシ①ウデフリツノザヤウミウシ

生息域はインド洋や西太平洋です。日本では沖縄でも見ることができますが、その個体数は圧倒的に伊豆や和歌山といった温帯域の海の方が多いです。別名「ピカチューウミウシ」とも呼ばれていて、ダイバーから高い人気があります。

このウミウシはピカチューに見えるように、できるだけ正面から写すように撮ってあげましょう。黄色の体もとてもきれいですので、そこも一緒に撮ると、かわいさがより伝わるはずです。

このウミウシは時にペアで登場することもありますので、そんなときはできるだけ2匹両方にピントが合うポジションにカメラを動かして撮れるといいでしょう。ピカチューのペアなんてかわいいでしょう。とにかくポイントは「かわいく撮る」ことです。ぜひ出会ったときはチャレンジしてみてください。

本州の海に住むウミウシ②セトリュウグウウミウシ

南方系のウミウシで、本州では黒潮のよく当たる海域で見られるウミウシです。沖縄にも生息しているようですが、沖縄で見た記憶がなく、黒潮のよく当たる和歌山県などで見ることが多いです。

ご覧のように、体の色がとても鮮やかで写真映えします。また、ホヤ類を主食としていますので、写真のように時にはホヤの上に乗り、食事しているシーンにも出会えます。背景に気を付けながら色がきれいに撮れるように露出に注意して撮影してみてください。

本州の海に住むウミウシ③ヒロウミウシ

北海道以南に住み、水温の低い時期に多く見られるウミウシです。ピンクのボディとフリフリのミノの部分がとてもきれいで可愛らしいです。大きさも1cmほどで、少し暗くなっているオーバーハングの下に住んでいることが多いです。

ヒロウミウシは、シーズンになるとあちこちで見られる普通種ですので、ウミウシ写真を撮る上でいい練習ができる被写体です。小さいウミウシですので単体で写してしまうと迫力に欠けてしまいます。

ですからできればペアなど複数個体を画面に入れてみるのがいいでしょう。その際ウミウシ本体のピンクが生映えるような背景の場所にいる個体を選んで写すのがおすすめです。

本州の海に住むウミウシ⑤シロウミウシ

沖縄では見ることができないウミウシです。白い体に背面に黒い点々模様が付いています。初心者ダイバーが本州の海でウミウシを見つけたなら、ほぼ間違いなくこのシロウミウシか、次に紹介するアオウミウシのどちらかでしょう。そのくらい本州の海では普通に見られます。

このウミウシも、写真を撮る練習にはもってこいの被写体です。ボディが白いので、露出を考えなければ、白飛びしてしまいます。カメラの露出補正に慣れるにも最適なウミウシです。また、大きさも3cmほどある個体が多いので撮りやすく、マクロ初心者の方にもおすすめできます。

稀にですが、こうしてホヤの上を散歩していることもあります。ただウミウシだけ写してしまうと、インパクトの弱い写真になりますので背景の処理を考えて写したほうがいいでしょう。

本州の海に住むウミウシ⑤アオウミウシ

本州では太平洋側、日本海側に関わらずどこにでもいるのですが、沖縄では見ることができないウミウシです。沖縄に来られたダイバーが「沖縄にはアオウミウシがいないのにはビックリしました」と話すぐらい、本州ではよく目につくウミウシです。

体は青く背面に黄色のラインや点々が入っているのが特徴です。先ほどのシロウミウシと同様、どこでも見つけられて数が多いので、ウミウシ写真の練習には最高の被写体です。背景がきれいな場所にいて、大きさが3cmほどの個体を選べばきれいに撮れるでしょう。

もしあなたが沖縄に潜りに行き、偶然にもこのアオウミウシを見つけたなら大発見になります。不思議な分布域のウミウシとも言われていますので、沖縄で発見したならば大騒ぎになるぐらい珍しいです。

本州の海に住むウミウシ⑥シロスギノハウミウシ

相模湾以北で生息している、とサイト等に情報がありますが、この写真は和歌山県の串本で写したものですので、寒い時期にはもう少し南の海でも生息しているのかもしれません。

あまり多く見られないウミウシで、どちらかと言えば「稀種」になります。白っぽい体に黄色の斑点がとてもきれいでウミウシ好きのダイバーには人気があります。また、やや大きめのウミウシで4cmほどにまで成長します。

筆者が知る範囲では、比較的深めの水深に生息していることが多く、登場する時期も決まっています。餌になる「コケムシ」類がたくさんあるところを好み、よくコケムシに寄りかかりむしゃむしゃと食事をしている様子も見られます。

このウミウシは、100mmクラスのレンズでは、被写体が大きくてフレームアウトしてしまうかもしれません。周囲の環境を入れて撮ろうとするならば50mmクラスのマクロレンズがおすすめです。

本州の海に住むウミウシ⑦サクラミノウミウシ

水温が低い時期によく登場し、全長が大きいもので45mmほどになります。写真では白っぽい個体ですが、サクラという名前が示すように、ごく薄いピンク色の個体が一般的です。大きいので発見しやすく撮りやすいウミウシです。

写真は1個体だけですが、伊豆方面では時にウミウチワやヒドラに、多くの個体が引っ付いているシーンも見られます。繁殖行動でそのように集まるのだとは思いますが、タイミングが合えば珍しいシーンも見ることができます。ガイドさんからそうしたシーンが期待できるという情報がもらえたときはワイドレンズを持って潜られるのがいいでしょう。

2.沖縄のウミウシ

沖縄のウミウシ①シンデレラウミウシ

体色は青っぽいものから赤紫色のものが多く、体長は大きいもので10cmほどになります。冬から夏にかけて登場しますが、数は多くなく稀にしか見られない珍しいウミウシの1種です。

パッと見たら、寿司ネタほどあるぐらい大きいので、50mmクラスのレンズで写すのがいいでしょう。今回は深い場所にいたので青を目立たせるために背景を黒くしましたが、浅瀬で登場した場合は背景を青くして、南国感を出すのもいいと思います。色とボディのダイナミックさを表現できればおもしろい写真が撮れるでしょう。

沖縄のウミウシ②ツノザヤウミウシ

沖縄では初夏のころに見られるウミウシです。しかし、どこでも見られるということではなく、砂地や泥地に生息しています。本州のウミウシで紹介したピカチューのようなウミウシと同じ種類で、沖縄では「白ピカチュー」と呼ぶガイドもいるほどです。

エサとなるコケムシが生えている環境を好み、運が良ければこうして複数のウミウシが、ところせましと固まって捕食しているシーンにも出会えます。写真にはこのウミウシが3匹写っているのがわかりますでしょうか。透明度の高い場所で出会えたなら、背景に海の青さを残し、白い砂地を入れて生育環境を写し込んでもいい写真になるでしょう。

沖縄のウミウシ③サーシャコヤナギウミウシ

以前、バリ島でこのウミウシが初めて紹介されたときには、その形態に驚かされ、「見たい」と思ったガイドやダイバーがたくさん沖縄にいました。もしかすると沖縄にもいるのかな?と探し回った記憶があります。

沖縄で見つかったころは「トゲトゲウミウシ」と呼ばれ、ウミウシファンにはかなり人気がありました。最近の研究ではさらに種類が細かく分類され「サーシャコヤナギウミウシ」という正式和名が付いています。名前は変わりましたが、人気のあるウミウシです。

基本的には泥地を好むウミウシですので、泥を巻き上げないようにして写すことが必要となります。このウミウシはまさに「トゲトゲ」のつんつんした体をかわいらしく写すことが1番だと思います。見た人が思わず「何これ?」とか「かわいい」と声をあげるような写真を撮ることを考え、いろんな角度から写されたらいいのではないでしょうか。

沖縄のウミウシ④コンペイトウウミウシ

西太平洋熱帯域に生息しているウミウシです。大きくなれば7cmほどにもなるウミウシで、時期になると割合いろんな場所で見られる普通種です。

オレンジの突起がかわいく、その名の通り「金平糖」のイメージで名前が付けられているので、写真をみて「お菓子のような生物」が写っていて色がきれいだと感じてもらえたる写真が撮れたらいいと思います。

二次鰓や触覚だけ写しても、何だか不思議で面白い写真が撮れますので、ぜひそんな切り取り方の練習もしてほしいです。大きいので50mmクラスのレンズでも十分撮れますよ。

沖縄のウミウシ⑤キスジカンテンウミウシ

食べ物繋がりで、もう1つ食べ物の名前が付けられているウミウシをご紹介しましょう。これは「キスジカンテンウミウシ」といい、先ほどのコンペイトウウミウシと同じくサンゴ礁域で普通に見られるウミウシです。日本では沖縄、八丈島、小笠原で見られています。

このウミウシも名前の通り「寒天にきれいな黄色の模様が入っている」イメージで写せばいいと思います。できれば体の白色を浮き出たせるように艶を出す感じでもいいでしょう。露出を考えて写してみてください。とてもきれいなウミウシですので、いろいろな角度から写してみましょう。やや斜め上から写しても体の黄色の線が奥まできれいに写りますのでおすすめです。

沖縄のウミウシ⑥アカテンイロウミウシ

大きくなると全長が5cmになるウミウシです。そこまで個体数は多くないので、見られたときはラッキーなウミウシです。このウミウシは何と言ってもこのきれいなカラーリングが特徴的です。

正面や斜め上方向から、黄色いラインと赤の斑点がきれいな流れになって見られるようなポジションを考えて写せばいいでしょう。背景にきれいなサンゴや色のあるヤギ類を入れても絵になると思います。

沖縄のウミウシ⑦アラリウミウシ

サンゴ礁の比較的浅い場所を好むウミウシです。大きさは2cm弱で、体の白色ラインと赤の斑点がきれいな稀種です。これはアラリウミウシの産卵シーンですが、同じアラリウミウシのはずなのに産んでいる卵の形状が違うことがわかりますよね。

こうした生物が生きるための活動をしている瞬間を写すことを「生態写真」や「ネイチャー写真」と呼んでいます。当時ベテランガイドさんがこの写真を見て驚いていたことをよく覚えています。絵的にきれいだという写真だけではなく、このような「ネイチャーシーンを写す」視点で写真を撮っても面白いのではないでしょうか。

【中級編】水中写真の第9回まとめ

本州と沖縄に分けてウミウシの紹介と、どのような考えで撮ればいいのかをお伝えしてきました。今回は数多くいるウミウシの中でも、本州も沖縄もあまり小さなウミウシは紹介せずに「撮りやすい」「見つけやすい」「色がきれい」ということを基準にして選ばせてもらいました。

海の宝石にふさわしいウミウシばかりですので、ぜひたくさんのウミウシに出会って水中写真を楽しまれてほしいです。ウミウシは両海域とも水温が低い時期によく見られます。ドライスーツなどで寒さ対策をしっかりしてから、じっくりと粘って写してみてくださいね。

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