【中級編】ダイビングの楽しみが広がる!水中写真 第8回ウミウシの撮り方

【中級編】ダイビングの楽しみが広がる!水中写真 第8回ウミウシの撮り方

前回は「クマノミの撮り方」について、詳しくお伝えしてきました。水中写真8の今回は「ウミウシの撮り方」についてお伝えしていきます。

ウミウシは「海の宝石」とも呼ばれ、色彩が豊かな上に形状もユニークなものも多くのダイバー、特に女性ダイバーには人気が高い生物です。

ウミウシは動きが遅く、時には岩の上や砂地の上でジッとしているので撮りやすく、カメラ初心者の方にも最高の被写体です。今回の記事を参考にして、ぜひあなたならではの海の宝石を写してみてほしいです。

1.ウミウシってどんな生物?

「ウミウシ」と一言で表しても、実は3000種以上いると言われています。体長は大きいもので30cm以上にもなり、小さいものでは1mm以下のものも多く見られます。生態もまだまだ謎が多く、これだけの種類がいるにも関わらず、毎年新種が発見されています。本当に不思議な生物なのです。

ウミウシは、種類としては「後鰓(こうさい)類中」というものに分類されます。これは「貝殻が縮小した、あるいは体内に埋没した、または消失した」という意味なのです。簡単に言いかえるなら「貝殻が退化、あるいは無くなった巻貝の仲間」ということになります。なかなかイメージがつかないかもしれませんね。

そんなきれいでかわいいウミウシですが、飼育には向かない生物としても知られています。本来はいけないことですが、何人かの知り合いがウミウシを水槽で飼って観察しようと試みたところせいぜい2日ほどで弱ってしまい色が変わったりミノが抜けてしまったりする異常が見られたそうで、慌てて海に返したという話を多く聞きました、ウミウシにとっても辛いですので、水中での観察や撮影にとどめるようにしましょう。

この話は逸話として知られていることですが、海洋生物の研究家としても知られている昭和天皇は学術的な研究のためにウミウシの飼育を行う中、ウミウシにさらに興味を持ち実際に食されたそうです。結果は「おいしくなかった」というご感想をお話しされたとのことです。巻貝の仲間ですが、食材には適さないようですね。

それでは、本題に入っていきましょう。

2.ウミウシの撮影に適したレンズを準備しよう

大きなものから小さなものまで見られる「ウミウシ」ですが、実際水中で見られるウミウシのほとんどは3cm以下の小さなものです。ですから、撮影用のレンズは「小さいものを撮ることができるレンズ」が必要となってきます。コンデジであれば、まずカメラ本体内の「マクロモード」をonにしましょう。

しかし、ウミウシのサイズによっては、それだけでは接近できる距離が足りないこともよくあるのです。その場合は「クローズアップレンズ」をぜひ準備してほしいのです。クローズアップレンズは水中でも脱着可能で、通常ハウジングの上からねじ込んで取り付けられます。

ねじ込むハウジングの直径が違い、直接クローズアップレンズをはめ込めない場合でも、変換アダプターや様々なアタッチメントもたくさん用意されていますので、あなたのカメラのパーツに合うものを準備してください。

一眼タイプのカメラをお使いの方は、「マクロレンズ」を用意しましょう。マクロレンズには35mm換算で「50mmクラス」と「100mmクラス」のレンズがありますが、ウミウシの場合はどちらでも基本的には撮ることができます。初心者の方なら50mmクラスの方が使いやすいと思うのでおすすめです。

しかし、レンズの購入はどうしてもお金がかかってしまいます。「2本買うことはできない」とか「ウミウシ以外の被写体も撮りたい」という方であれば、筆者の個人的な意見ですが「100mmクラス」の購入をおすすめします。

ウミウシの撮り方とは少し話が外れてしまいますが、筆者の場合「100mmクラス」のレンズはカメラメーカー純正のレンズを新品で購入し、「50mmクラス」のレンズはカメラ専門メーカー(サードパーティーとも言います)の中古レンズを購入し使い分けています。その際に気を付けることとして、「ハウジングのポートを付け替えなくていいようなレンズ選びをする」ようにしたらいいと思います。

ポート代もかなり高いですし、レンズを変えるたびにポートを付け替えていたら水没の可能性も高くなります。そこに気を付けて購入したら、比較的安価で2本のレンズをそろえることができ、海で使うことができます。

また、一眼タイプでも「クローズアップレンズ」は使えます。「ウミウシの顔をドアップで写したい」などをやってみたいと思ったら、ぜひ準備されてください。

3.ウミウシ撮影のストロボとライト

ウミウシは「色のきれいさ」や「形状のユニークさ」の特徴から人気がある被写体です。特に色彩はどんな著名な芸術家でもあの組み合わせや模様は考え付かないことでしょう。

実際にウミウシの写真でとある芸術祭の写真部門に出品した際、品評会で画家の方から「この模様と色彩はまさに芸術的だ」と話していただいたことがありました。自然の色合いや模様は人間では作ることができない芸術作品だとも言えますね。

せっかくそんな素晴らしい被写体が目の前にいるのですから、きれいに写してあげてほしいのです。その際に必ず必要となる器材が「ストロボ」及び「ライト」です。できれば太陽光に近い色温度のストロボやライトを使用されることをおすすめします。

特にコンデジの場合、「内蔵ストロボ」を使用して撮ることもできますが、ウミウシにかなり近づいて写真を撮ることになるためウミウシの一部だけあるいはウミウシ以外に光が当たってしまうこともよくあるのです。そのくらい接近しての撮影になるので大光量のストロボは必要とはしませんが、外付けのストロボまたは水中用のライトは必需品となりますので、準備しましょう。

4.水中カメラのピントはどこに合わせたらいいのか

結論から言います、「ピントは触覚に合わせる」ことを意識してください。触覚の下にウミウシの目があり「ピントは目に合わせる」と言いたいところですが、そうではなくウミウシの場合は「触覚に合わせる」ことが基本となります。

きちんとピントを触覚に合わせたら、次に考えるのは「被写界深度でどこまでピントを合わせるのか」と言うことです。被写体に接近して写しているから露出は絞って(数値を大きくして)撮る方がいいのかなとも考えてしまいますね。確かに絞れば被写界深度が深くなり、ウミウシ多くの部分を鮮明に写すことは可能になります。

しかし、あえて絞りを開けて(数値を小さくして)、思い切って開放にして写してみるのも面白いです。この辺りはあなたが表現したいウミウシは何かで考えていただいてかまいません。動かない被写体ですので、いろいろ設定を変えて試してみてください。

また、ウミウシの体の後方にある花が咲いているようにも見える「二次鰓」という部分だけアップで写してみるなど、「触覚以外に目を向けて撮る」こともやってみたら面白いです。

いずれにせよ、「ピントをきっちりと合わせる」ことは基本中の基本です。ウミウシで練習しながらスキルアップしてきましょう。

5.ウミウシの撮影で注意すること

先ほどもお伝えしたように、ウミウシにはいろいろな色彩の種類がいます。中には白ベースのウミウシもいますし、黒ベースのウミウシも多くいます。これらのウミウシを撮る上で必要となるスキルが露出補正です。

簡単に言うなら、「白いウミウシを撮るなら適正露出よりも少し絞って撮り、黒いウミウシを撮るなら逆に適正露出よりも絞りを開けて撮る」ことです。適正露出で撮ると、白っぽいウミウシは「白飛び」を起こしやすく、黒いウミウシは「黒潰れ」することが多くなり何が写っているかわからなくなってしまうのです。

カメラで露出補正を設定するか、マニュアル撮影で露出設定の際に調整するなどしてその被写体に合った露出を考えましょう。このスキルは白っぽいハゼを撮るときや、黒っぽいカエルアンコウを撮るときなどでも同じで応用がききます。あなたの写真のスキルアップとしてぜひここで身に付けておきましょう。

6.ウミウシの撮影でワイドレンズも使ってみよう

ウミウシには30cm以上にもなる大きな種類もまれに登場します。そこまではいかなくとも10cmレベルのウミウシはしばしば出会うチャンスがあります。そこで間頃レンズで写すには大きすぎるなあと感じたときは、あえて「ワイドレンズで写してみる」ことをおすすめします。

コンデジのよいところとして「水中でレンズの脱着ができる」ことがあげられます。大きなウミウシが登場したときは、「クローズアップレンズを外して撮る」ことをやってみて、それでも画面におさまらないときは「ワイドコンバージョンレンズを付けて撮る」ことをやってみてください。また違った感じに撮れることは確実です。

7.ウミウシの住人もいっしょに撮ってみよう

極小のウミウシには住んでいませんが、大きめのウミウシには時に住人がいます。その多くは「ウミウシカクレエビ」というバルタン星人みたいなエビが1匹、もしくはペアでいることもあるのです。ウミウシのきれいな体の色を背景にして、そんなエビたちを写してみるのも楽しいです。大きめのウミウシに出会ったら、ちょっと探してみてくださいね。

【中級編】水中写真の第8回まとめ

以上、ウミウシの撮り方についてお伝えしてきました。ウミウシはあまり動かない被写体ですし、光の当て方によってはとてもきれいに撮ることができます。カメラ初心者の方にとってはまさに「最高の練習になる生物」です。カメラを買ったばかりなどで、カメラに慣れたい方にもおすすめの被写体ですね。

その9では「本土の海」や「沖縄の海」でぜひ撮ってほしいウミウシを、筆者が選んでお伝えする予定です。そこではウミウシの名前だけではなく、「生息域」や「撮れたら嬉しいシチュエーション」、「生態」等についても触れたいと思います。ぜひ楽しみにしていてくださいね。

【中級編】ダイビングの楽しみが広がる!水中写真

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