【中級編】ダイビングの楽しみが広がる!水中写真 第3回 自分の作品を創ろう

【中級編】ダイビングの楽しみが広がる!水中写真 第3回 自分の作品を創ろう

第3回水中写真では、水中写真の初心者から中級者へのステップアップを考えているダイバーを対象にお伝えします。もちろん初心者の方から中級者以上の方でも、参考になることはあると思います。

この時期は水中写真を単純に楽しむという段階から、作品を作りたいとかフォトコンテストに出して、入選してみたいという思いが出てくる時期だと思います。

そのレベルに向けて、器材はどうするのか、必要となるテクニックについても書いています。あなたの水中写真ライフがステップアップするための参考にしていただければと思います。

1.水中カメラの器材を見直してみよう

この段階になると、通常のダイビングスキルはほぼマスターできていると思います。中性浮力もとれ、エアーも無駄な消費が減り、落ち着いてダイビングができていることでしょう。もしそれがまだなら、まずはダイビングスキルが問題ないレベルまでスキルアップすることを優先することをおすすめします。

初心者の段階での「コンデジ+ハウジング」で写した写真では満足できなくなり、「もっと作品的な写真が撮りたい」とか、「コンテストで賞を取りたい」と思うようになってきたのであれば、1度撮影機材を見直してみる必要が出てきます。

本格的に水中写真をやっていくなら、器材を購入することも必要となりますが、実はけっこうな価格がします。ダイビングショップに行くと様々な撮影機材が売られていますが、「こんなに高いのか」と驚かれた方も少なくないでしょう。

ですので、どこまで撮影機材をそろえるかは、予算と今後ダイビングにどの程度行くのかによって変わってきます。筆者が考えるタイプ別による器材のそろえ方です。あくまでも個人の考えです。

低予算で年に数回ダイビングに行く方

今お持ちのカメラ器材に「外付けストロボ」を購入し、余裕があれば「ワイドコンバージョンレンズ(ワイコン)」 と「クローズアップレンズ」の購入がいいかと思います。

実は「外付けストロボ」で写すだけでかなり写真が変わってきます。マリンスノーと呼ばれる水中浮遊物の写り込みもかなり無くなりますし、ライトの当て方にも工夫ができるようになります。またワイコンとクローズアップで、ある程度大きめの魚から小さなウミウシの写真も写せます。今お持ちの器材を使えるのも利点です。

ある程度の予算があり、2か月に1回程度ダイビングに行く方

「ミラーレス一眼+レンズ」に「カメラメーカー純正ハウジング」と「外付けストロボ」の組み合わせをおすすめします。ミラーレス一眼は比較的安く買うことができ、カメラメーカーから販売されているハウジングも驚くほどの値段ではありません。1番高いものはおそらく「外付けストロボ」となります。

問題はレンズですが、ここは「何を撮りたいのか?」で決まってきます。この点については次の項目でお伝えします。

月1回以上潜るダイバーの方

「ミラーレスも含む一眼+レンズ」に「ハウジングメーカーのハウジング」と「外付けストロボ」という組み合わせでいいと思います。フルセットで揃えて安いものでも50万近く、こだわりを持ってそろえると100万を超えると思ってもらっていいでしょう。

ここまでくると、カメラも中級機以上のものを使いたいでしょうから値段は相応なものになりますし、ハウジングもアルミ製の丈夫なものを使いたくなっているはずです。また、ストロボも2灯装備にしても不思議ではありません。

次はレンズです。⑵と同様、何を撮りたいかでレンズが決まります。次の項目でお伝えします。

2.水中写真で何を撮りたいのか絞ること

「新しくカメラ買いたいのですが、どんなものがいいですか?」と相談を受けることがよくあります。その際に筆者が相手に質問することが、「何を撮りたいの?」あるいは「どんな写真を撮りたいの?」ということです。

たいていの方は、「マンタやウミウシ、ピグミーなど撮りたい」というように、そのダイビングで出会った生物や風景を全部撮れるようにしたいと答えます。結論から言うと、そんな万能なカメラやレンズはありません。極端に言うと1ダイブでは「大きいものか小さいものかのどちらか」しか撮れないのです。

もし、マンタやギンガメアジの大群が撮りたいのなら、フィッシュアイというレンズを付けて「ワイド仕様」にする必要があります。そのダイビングでピグミーシーホースが出てもワイド仕様ではきれいには写すことができません。

逆に小さなギンポの表情を撮りたいのなら、マクロレンズを取り付け「マクロ仕様」にする必要があります。そのダイビングでマンタが登場しても、マンタの目のアップは撮れるかもしれませんが、マンタ全体は撮ることはできないのです。

1台のカメラで1ダイブごとにワイド仕様とマクロ仕様を交代して使うことはできます。その場合ハウジングのレンズを覆う部分の「ポート」を変える必要があります。

ポートだけでもけっこうな値段がしますので、予算から考えても、まずはワイド仕様にしてそれに合ったレンズを購入するか、マクロ仕様にしてマクロレンズを購入するかのどちらかにすることをおすすめします、

それでも、「いや、何が出てくるかわからないからワイドもマクロも両方なんとかしたい」という方がいるかもしれません。それを解決するには、カメラやハウジング、ストロボを2台分用意して、2台持って潜れば両方撮ることができます。

そんなダイバーいるのかなと思う方がいるかもしれません。が、極まれにいらっしゃいます。詳しく聞いていると、「一度に買うことはできなかったものの、1年かけて最初はワイド仕様、その後マクロ仕様をそろえました」とのことでした。

あなたが撮りたいものは何か。よく考えてから購入を考えてみてください。

3.初級から中級へのステップアップ~水中カメラをマニュアルで写そう

基礎編はこちら

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初心者の方ならオートで写しても十分楽しめますが、ステップアップしたいなら、露出もシャッターも自分で決める「マニュアル撮影」に切り替えることをおすすめします。その方が自分らしい絵作りをできるからです。

外付けストロボにすることで、光を横から当てたり、下から当てたりするなど工夫ができることも理解できたでしょう。同じようにストロボの光だって強くしたり弱くしたりできます。こうしたことでずいぶんと雰囲気が変わる写真になります。

また、このレベルになると「被写界深度」という意味を知っておく必要が出てきます。この意味が分かると、絞りを変えることで、ピントの合う範囲が違ってきます。

画面全体的にピントが合う写真を撮ることもできますし、一部分にピントが合って、他はぼかした写真だって撮ることができます。ここについては後半の項目でわかりやすく説明します。

特徴的な写真を撮るには、マニュアル撮影に慣れていくことが必要です。最初は失敗も多くなるかもしれませんが、上達を早めたいならマニュアル撮影で取り組むことが近道です。

4.魚の生態、海の環境、ダイビングスキルを勉強しよう

写真の上達への近道の1つとして、魚や海に詳しくなることが大切です。例えば、ハゼが撮りたいと思うなら、

そのハゼはどんな環境を好むのか?(砂地?ガレ場?ドロ地?)
近寄りやすいのか、寄りにくいのか?(敏感なハゼ種?水温との関係は?)
ハゼが巣穴に逃げようとする前触れは?(前触れが見えたら近づくのをストップする)
大きさはどのくらい?(50ミリレンズ?100ミリレンズ?)

撮りたい魚について詳しく知ることで、いい写真が撮れるようになります。他にも「サンゴの産卵が撮りたい」なら、産卵するのはいつごろかとか、何時ぐらいに産卵するのか等は知っておく必要がありますし、それに対する準備も必要となります。

また、もし浅い場所の写真を撮りたいのなら、体が浮き気味になるので前もってウェイトを少し重めにして潜る方が、体が安定するためにカメラがぶれず、写真に集中できます。

カメラのスキルだけでなく、生物や海全体の知識を身に付けていくこと、さらにダイビングスキルをアップさせることが実は上達には欠かせないものだと知っておいてほしいです。

5.水中カメラで実際に写してみよう「ワイド編」

ワイドレンズの遠近感を知ろう

水中でワイドレンズを使うとき、知っておいてほしいのは「遠近感」です。これは言い換えると、「手前のものを大きく写しても、周囲も写すことができる」という意味です。遠近感を出すコツは「被写体に寄ること」です。

全体を入れたがってしまい、ついつい被写体から離れて引き気味になってしまう場合がよくあるのです。それは逆で、思いきり寄ってみてください。寄ることによって遠近感のある特徴的な写真が撮れるのです。

生物の大きさを誇張してみよう

「遠近感」がわかれば、それをいかして大きさを誇張した写真が撮れるようになります。つまり「遠近感を強調する」ということです。下のソフトコーラルの写真ですが、画面の奥にダイバーが入ることで、見る側は「人間との大きさを比較」するため、手前のソフトコーラルが大きいものだと思い込みます。

実はそこまで大きなものではないのです。でも遠近感からの大きさの誇張で、そのように見える写真が撮れるのです。また背景にダイバーを入れることで、ワンポイントのアクセントとなり、特徴のあるワイド写真を撮ることができるのです。

生物を「上から」「横から」「下から」も撮って見よう

ワイドレンズの画角はとても広いです。そのため、少し撮る角度を変えるだけで写る範囲も変わってきます。一般的には「被写体の横から(水平に)撮る」というイメージを持たれるでしょう。

陸上で、普段スマホ等で写真を撮る場合は、地面に水平方向に撮ることが多いはずです。そうした習慣が身に付いているので水中でも同じように撮ってしまうのでしょう。

水中では「水平方向」だけではなく、「下から見上げて水面を入れてみる」や、「浮いた状態で上から写してみる」ことをぜひやってみてほしいのです。ちょっとした撮影位置の違いで、写真の印象が大きく変わることに気が付くはずです。横からの次は下から、その次は上から、というように意識してみましょう。

太陽を脇役にしてみよう

画角の広い写真を撮る場合、意識していなくても背景が水面になることもよくあることです。その時に特徴的な写真を撮るコツの1つが「太陽に脇役として画面に入ってもらう」ことです。

専門的な言葉で言うなら、「画面の中に1番明るい部分(ハイライト)が入ることで、画面が引き立つ」のです。また、太陽が入ることで、水中の青にグラデーションがかかり、色の変化や水深の深みを伝えることができるのです。ワイド写真を撮るときは、太陽の位置を確認し、太陽が入る位置から写してみることも、ぜひやってみてください。

6.実際に生物を写してみよう「マクロ編」

カメラの絞りを変えてみよう

マクロレンズを装着したか、あるいはクローズアップレンズをセットしたあなたは、きっとウミウシやソフトコーラルのポリプといった「小さな世界」を切り取りたいと思っているはずです。ピントを合わせることや、ストロボを使うこと等はもう十分理解していることでしょう。

ステップアップでぜひ覚えてほしいことの1つは「絞りを変えてみる」ことです。今の絞りから数字を小さくしていくことにチャレンジしてほしいのです。今絞りの値が8ならば(f8)、それを5.6や4というように小さくしていくのです。

絞りの値を小さくすることで、絞りは開けられていきます。そうなることで変わることが2つあります。1つは「背景のボケ方」で、もう1つは「ピントの合う範囲」です。

最近では「ボケを大きくする」写真が海に限らず陸でも好まれています。背景をボケさせて被写体を浮かび上がらせるには、絞りを開けることが求められるのです。しかし、ピントの合う範囲は狭くなり、シビアになります。ちょっとカメラが動いたり、手が震えてブレたりすると、ピンボケになってしまいます。

絞りを変化させて写し、ボケ味を変化させて写すこともマクロ写真の楽しいところだと思います。

カメラの適正露出を無視してみよう

端的に言うなら「露出オーバー気味で写してみよう」ということです。もちろん写真撮影の基本は「適正露出で撮りましょう」です。しかし、ステップアップとして「ややオーバー気味で写して雰囲気が違う」写真にチャレンジしてもいいのではないでしょうか。

適正露出で写すと全体にカチッとした写真が撮れます。しかし、一時期「メルヘンチックな水中写真」がとてもブームになり、カチッとした写真より、ふんわりとした雰囲の写真が多く撮られるようになったのです。今でもそうした写真はたくさんSNSでもアップされています。

これはカメラの露出補正をプラスにしたり、ストロボの発行量を多くしたり、また絞りを開け気味で写したりすることで撮影できます。失敗したら、またその場で撮り直ばいいのです。いつもと違った写真にトライしてみましょう。

水中写真第3回のまとめ

以上、水中写真第3回をお伝えしました。ここまでマスターできれば、かなりの写真が撮れているはずです。もっとステップアップしていくには、「色の配置」「構図」等の勉強をしていくことが必要です。

たくさん潜って、たくさん写真を撮って、ダイビングライフを楽しまれてください。

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