【中級編】ダイビングの楽しみが広がる!水中写真 第4回構図を意識しよう
これまでの「水中写真その1~その3」では、これから水中写真をスタートする初心者から中級者へステップアップする方を対象に「機材の選び方」や「カメラの設定」、撮り方のコツ」などをお伝えしてきました。読んでいただけた方にとっては参考になることもあったのではないでしょうか。
今回のその4では、水中写真中級者の方を対象にして「もっと人に伝わる写真を撮るにはどういうスキルを身に付ければいいのか」ということを中心にお伝えしていきます。今回は「構図」を中心にお話しします。
「ただ綺麗に写ればいい」という段階から、「作品に仕上げていくにはどうしていけばよいのか」という点に焦点を絞ってお伝えしていきます。今回取り上げることは、ワイド写真でもマクロ写真でも意識してほしいことばかりです。きっと参考になることがあるでしょう。
目次
1.水中写真の構図って何ですか?
簡単に言ってしまうと、「四角い写真の中にどう被写体を配置するか」ということです。最近のカメラは性能が良くなっていますので、シャッターを押しさえすればきれいな写真を撮ることは可能です。
しかし、それはあくまでも「魚や風景がきれいに写っている」という写真であって、「あなたがその写真で何を伝えたいのか」や「あなたが何を感じた写真なのか」が見ている側に伝わる写真ではないのです。
例を出すと、「単にクマノミをきれいに写す」のか。「こんなきれいな所にクマノミがいた」と伝えたいのか、逆に「クマノミはこんな劣悪な環境に住んでいた」ことを伝えたいのかによって、写す範囲も違ってきますし、クマノミをどこに配置するかも変わってくるはずです。
それを水中での限られた時間内で考えて写すために、構図を勉強していく必要があるのです。ぜひ意識してほしい点です。
2.水中写真構図の紹介
水中写真構図の紹介①日の丸構図
日の丸の旗のように「画面のど真ん中に被写体を置く」構図です。最もシンプルな構図と考えてもらっていいでしょう。初心者の方はまずこの構図で写真を撮っているはずです。オートフォーカスを使い、画面中央でピントを合わせてシャッターを押したら、被写体はど真ん中に写っているはずです。それが「日の丸構図」です。
カメラの本などでは「日の丸構図はやめましょう」というように書かれているものも多いですし、カメラ好きの方の中にも同じようなことを言われる方がいらっしゃいます。
しかし、この構図が1番ピッタリとハマることもありますし、「あなたが伝えたいことを表現するには日の丸構図が1番だ」と考えたなら、自信を持ってこの構図で撮ってもかまいません。
「撮った写真が全部日の丸構図」というレベルからは、中級者になった以上、卒業することをおすすめします。
水中写真構図の紹介②対角線構図
写真の画面の対角線上に被写体を置く構図です。右上からでも左上からでもかまいません。被写体を斜めに配置する方法です。被写体の「動き」や画面の「奥行」といった部分を強調したい時に使うと効果的です。
水中写真構図の紹介③サンドウィッチ構図
写真の画面を3分割して被写体を配置する「3分割構図」の1つです。何かで挟むことにより、画面に安定感が出てきます。「動きの制限」や「狭さ」、「守られている」といった感じを伝えやすいです。
水中写真構図の紹介④三角構図
写真の画面の中に「三角形に見えるように被写体を置く」構図です。山の形やピラミッド型に見えるので安定感が出てくるのです。どっしりとしている感じや、広がりを表すのにも効果があります。
三角構図の応用として「逆三角構図」もあります。これは三角構図の逆の効果が得られ、画面に不安定な感じが出てきます。「不安」や「アンバランス感」、「ゾクゾク感」などを表す時に使ってみると効果的です。
水中写真構図の紹介⑤シンメトリー構図
画面を2つに分けて配置する「2分割構図」の応用で、「線対称構図」と考えればいいでしょう。縦でも横でもどちらでもいいので、画面に線をイメージし、上下あるいは左右対称になるように被写体を置く構図です。
水中写真は魚や生物は基本動くので、この構図は難しいところもあるのですが、動かない被写体もあるので、そうしたものを写す時に浸かってみてほしい構図です。
もちろん他にも構図はいろいろあります。今回はこの5つの構図だけお伝えします。構図の基本を頭に入れてイメージをして、実際に写してみましょう。魚でもウミウシでも風景でも地形でも、何でもかまいません。あなたが好きな水中をどんどん写してみましょう。
写真に限ったことではありませんが、基本ができていればどんどん応用することができます。水中には限られた時間しかいることができません。ですから「普段写真を撮るk時から意識してみる」ことが大切です。
あなたが友人と食事に行ったり旅行に行ったりしたときに写真を撮る機会はきっとあるはずです。そんな時にも「構図を意識して写してみる」ことが上達の近道になるのです。覚えたことは海だけでなく、日常の中でもフィードバックすることで上達のスピードが上がることはまちがいありません。
2.水中写真の構図にスパイスを加えてみよう
1でお伝えした構図はあくまでも「基本」です。そのまま実践して取り組んでいただいてもかまいませんが、実際の海の中ではその通りできるとは限りません。もちろん、その通りやる必要もありません。
大切なのは「基本を生かして、実際の場面ではどう応用していくか」が大切になってきます。水中を含め自然を写す時は「臨機応変に対応する」ことがとても大切になってくるのです。
そこで臨機応変に対応できるように、「構図の基本に加えるスパイス」をお伝えします。これを知ることでで、さらにあなたの写真がステップアップすることはまちがいありません。
水中写真のスパイス①背景は何にしますか?
実は初心者の方はこの点を意識されてない方、というより「意識がそこまでまわっていない」方が多いのです。つまり「撮りたい被写体ばかり見ていてピントを合わせて写していまい、周囲にまで気を配れていない」というパターンです。背景を何にするかということを考えて写すようにしてほしいのです。
中心になる被写体を引き立たせるためにはどうしたらいいでしょうか?例えば、サスペンスドラマの最後に崖が使われるのは物語と主人公を引き立たせるために必要な効果です。
背景が違うと場合によってはそれまでの物語や主人公が台無しになってしまうでしょう。同じように、あなたが伝えたい被写体を生かすために背景をどう撮ればいいかを意識してください。
水中写真のスパイス②あおってよし、俯瞰でよし
簡単に言うと、「上からも下からも写してみよう」ということです。水中なら人間は浮くことができるので俯瞰での撮影が簡単にできるのです。もちろんそれによって構図を変えていく意識は必要です。
寝そべる様に「ローアングル」で写し、膝をつくような角度で「横から」も写し、浮いた状態で「俯瞰で」写すことをぜひやってみてください。
ちょっとした撮る高さや角度の違いで写真のイメージは変わりますし、背景も違った感じで撮ることができます。チャレンジしてみてください。
水中写真のスパイス③写真にダイバーも入れてみよう
背景が寂しいと感じたり奥行きがほしいと思ったりしたときは、ダイバーに入ってもらうことで解決することが多いです。難しくいうと「空間処理」というのですが、写真内でぽっかり空いてしまった場所にダイバーを置くことにより、その処理がうまくでき、効果的になることも多いのです。やってみてほしいです。
3.水中写真を縦構図で撮ってみよう
水中写真の縦構図の特徴①横構図と写真の雰囲気が変わります
筆者の場合ですが、原則「横に広がりを求めるときは横構図で、ドロップオフのように縦に広がりを求めるときは縦構図で」写すようにしています。表現したいのは、横一面でしょうか?深さでしょうか?そういうところを意識してどちらの構図で写したほうが効果的かを常に考えて写すことが大切です。
水中写真の縦構図の特徴②水面や太陽も入れてしまおう
先ほどお伝えした「背景処理」とも関わってくることですが、ダイバーの代わりに太陽を入れてポイントにしたり奥行きを出したりすることがあります。その際、横構図でも可能ですが、縦構図の方が配置しやすいのです。
太陽を背景に入れることにより、青い海も写すことが可能になりますし、太陽の光のカーテンや、深さによって微妙に変化していく青のグラデーションも写すことができるでしょう。縦構図でチャレンジしてほしいです。
水中写真の縦構図の特徴③左右にあるいらない部分をカットできる
横構図だとときに画面の左右に無駄なスペースが生まれてしまうことがあります。横に無駄に広がるイメージの写真になってしまいがちですが、それを縦構図にすることで安定した構図になることがよくあるのです。写真の印象がまるっきり変わりますので、ぜひ試してみてください。
水中写真の縦構図の特徴④横構図との違いが明確にわかる
これは実際にアドバイスされたことですが、「その被写体に対し、横構図も縦構図も両方撮っておくこと」をやってみて下さい。実際に同じ被写体を写しても縦構図と横構図では印象が全然違ってくるのです。
あなたも1度自分で写してみると、その違いがわかるはずです。そして「意外に縦構図の方がいい感じだな」と思うこともけっこう多いのです。縦構図で写すことに慣れるまでは、常に両方の構図で写すことを意識してみてください。
水中写真の縦構図の特徴⑤外付けストロボを活用しよう
中級者のあなたですから、もうストロボは「外付け」ですよね。もしまだ内蔵ストロボを使っておられるなら、ステップアップの為に外付けストロボの導入を考えてみてほしいです。検討されてみてくださいね。
縦構図で写す場合に気を付けなければいけないことがあるのです。それは「外付けストロボの位置」です。横構図用にセットされたストロボの位置を変えずにそのまま縦構図にした場合、影ができる場所が変わってきます。
特にストロボを1灯で写されている方は注意がより必要となってきます。縦構図にしたとき、ストロボがどこに行き、どこから光が当たって影がどこにできるかを考えた上で、位置を変えるなどの方法をとることが大切です。
ワイドで2灯のストロボを使っている方も、アームを広げたまま縦構図にするとストロボが水底に当たったりサンゴなどに触れたりして、水中でドタバタしてしまう風景を何度も見てきました。ストロボの位置がどこに来るのか、下からの光は効果があるのか等を考えて、ストロボの位置を変えていきましょう。
【中級編】水中写真の第4回まとめ
以上、今回は「構図」に絞ってお伝えしました。今回お伝えしたことが次のダイビングで全部できるとは思いません。まずは1つでもいいので、ここで読んだことを生かしてトライしてみてくださいね。
中級者に必要なスキルはまだまだあります。「どれだけ寄るか引くか」や「生物別の撮り方」等、知っておいてほしいことはたくさんあります。それらはまた別の機会でお伝えできればと思っています。
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