【中級編】ダイビングの楽しみが広がる!水中写真 第5回被写体との距離をつかむ

【中級編】ダイビングの楽しみが広がる!水中写真 第5回被写体との距離をつかむ

前回のその4「ダイビング 水中写真 第4回 中級編 構図を意識しよう」では「構図について」を、作例を示しながらお伝えしてきました。今回のその5では、さらなるステップアップをしてもらうことを目的に、水中の被写体に「どこまで寄ればいいのか」「どこまで引けばいいのか」をお伝えします。あなたの水中写真の参考にしていただければ幸いです。

1.水中写真に想いを乗せよう

水中写真を撮り始めた頃によくやっていたのですが、被写体の魚全体をカメラに入れようとし、そのために、魚の横から写真を毎回撮る。そんな写真をどこかで見たことがありませんか?そうです。それは「図鑑の写真」です。

図鑑なら全身が写る写真が求められますが、あなたが撮りたい写真はそうしたものではないはずです。図鑑よりも作品としての写真が撮りたいと考えていると思います。

図鑑的な写真がダメではありません。図鑑写真は、実はとても高いスキルが要求されるのです。ピントがきちんと合ってなければなりませんし、それに加えて、目だけでなく全身にピントが合っている方が魚の特徴がわかりやすい写真になります。

さらに、全身が写る距離は魚の大きさによって異なるので、ストロボの光の加減や適正露出にするための絞りも設定など毎回変わってきます。図鑑写真にはそうしたスキルが必要となります。

しかし、今あなたが撮りたいと思う写真はそれとは違うことでしょう。毎回真横から全身を入れるように写していたなら、その被写体に対して、あなたがどこに魅力や面白さを感じたのか、その被写体であなたが見てほしいところはどこか。

さらに、あなたが表現したかったことは何か、が相手に伝わることはありません。まずは、あなたの思いを写真に乗せることができるような「被写体との撮影距離」を一緒に考えてみましょう。その内容でお伝えしていきます。

2.海の生き物に近寄りすぎない

以前の記事で「できるだけ近寄りましょう。できれば50cmぐらいまで寄れたらいい」というようにお伝えしました。被写体に寄ることは、水中写真の基本であることは間違いありません。

最近のカメラはコンデジでもマクロ機能が充実しているものも多くなり、1cmぐらいまで被写体に寄れる機種もあります。水中は必ずしも透明度がいいとは限りません。また、人気の被写体である「海の宝石のウミウシ」は、とても小さなものも多く、こうした機能はきれいな写真を撮るための助けとなります。

しかし、ちょっと考えてみてほしいのです。ただ寄っただけできれいに撮れるでしょうか?ここからはカメラ器材もステップアップしていることを前提にし、「外付けストロボ」を使って写すことに絞ってお話しします。

例えば、ウミウシのきれいな色を出したいのなら、スキルとしてウミウシに近づいた分、ストロボの光量を調節しなければなりません。離れて撮っているのと同じ光の量だと、被写体まで近い分、光が当たりすぎて真っ白な写真になってしまいます。ストロボの光量を弱くするか、露出を絞るかをする必要があります。

また、外付けストロボの場合、「被写体にきちんと光が当たっているか」を確認しなければなりません。意外にもストロボが別の方向を向いていたり途中の石などに光が当たっていたりするものです。この2つはまず確認しましょう。

もう1つは表現の面からです。あなたが伝えたいことは「ウミウシのアップ」なのでしょうか。それとも色の綺麗さでしょうか。伝えたいことは何か、見てもらいたいことは何かをもう1度考えてほしいのです。

それがハッキリしたのならば被写体までの距離をどうしたらいいのかがわかるはずですし、ただやみくもに寄ればいいという考え方はしなくなるでしょう。

3.海の生き物に離れすぎない

近すぎるのは考えものだと2でお伝えしましたが、逆に遠すぎるもの問題です。今度は距離があることで光が届かなくなってしまうからです。

水中ですので当然のことながら、被写体とカメラの間には「水」があります。この水は光を吸収するフィルターのような役割を果たすのです。空気中なら光が届く距離でも水中では届かないのです。そのため被写体までの距離が遠すぎると、写真全体が青っぽくなる「青被り」という現象が起こるのです。

あなたが「青い世界を表現したい」というのなら、あえてストロボを使わずに写すことはありです。実際に「自然光での撮影」を中心に写されている方は多くいらっしゃいます。

もし「全身を写したい」とか、「どうしても寄れない」などの理由があるのなら、ストロボの光量を強くするとか、露出で絞りを開けることをしなければなりません。それでも光が届く距離には限界があることは知っておくべきです。撮影距離はよく考えて写すようにしましょう。

4.被写体との距離は何を中心に決めたら良いのか

ズバリ結論からお答えします。それはやはり

・「何を表現したいのか」
・「何を伝えたいのか」

です。この2点がない限り、被写体までの距離は決まらないと言うことができます。

その被写体を撮るということは、あなたは以下のように何かを感じ、伝えたいと思ったからその被写体を撮りたいと思ったのでしょう。

・「この魚はかわいい」
・「面白い」
・「こんなシーンを初めて見た」
・「迫力あるな」

そのとき、撮影距離によって何を伝えたいかという表現する意味が違ってきます

例えば、クマノミで考えてみましょう

これは「顔のアップ」を写しました。このクマノミは「麻呂」というニックネームが付いています。筆者が撮りたかったのは目の上の白い部分が、公家の眉毛みたいに見えるところです。この場合は「かなり寄って写す」ことをしないと自分の伝えたいことが伝わりません。

この写真の場合は「卵の世話をする様子」を伝えたかったのです。ですから「クマノミの卵と親クマノミが胸鰭で新鮮な水を卵にかけているシーン」を撮りました。あまり近寄ってしまうと狙った写真が撮れません。

この写真は、青い海に住むクマノミを伝えたかったのです。ですからバックが青くなるようにしましたし、サンゴ礁の中に住んでいることも表現したかったので、周囲の環境を取り入れるように写しました。フィッシュアイレンズを使って写したので近寄っていますが、前の2枚に比べて、被写体が遠く感じると思います。

これら3つの作例のように、あなたがその写真で何を表現したいのかで、被写体との距離が決まりますし、写す範囲も同時に決まります。ここは意識をして撮影してみてください。

5.被写体の全体と一部、2種類撮ってみよう

下の2枚の写真は場所こそ違いますが、同じ「ヤシャハゼ」という魚です。一般的にはヒレ全体が写る様にして撮ります。ハゼはヒレ全開の時は本当にきれいですからね。

あるとき、ハゼの表情や目の周り、背びれの細かい模様に興味を持って顔中心のアップを写してみたのです。すると今まで気が付かなかった模様のきれいさや、体の色がよくわかり、「こんな風になっているんだ」と驚いたことがありました。とっても新たな発見でしたし、魚の神秘的な部分が伝えられたと思っています。

1つの被写体に向き合うとき、この距離だけ撮ればいいというのではなく、撮影距離を変えて写してみることも面白いと思います。こうすることで、自分の固定概念が崩されて「この距離で撮るとこのように写るんだ」「新たな発見だった」というようになり、次回以降の撮影にフィードバックされ撮影の幅が広がると思います。落ち着いて、余裕ができたときだけでもいいので、撮影距離を変えてみましょう。

6.時には生物に思いきり寄ってみる

被写体の一部分だけを切り取って写してみると、意外にもアート的な写真が撮れたり迫力ある写真になったりするものです。あなたが表現したい世界がそこにあるかもしれません。

ウミガメの顔だけを写してみました。カメって実はかわいい顔していますよね。普段見るカメとは違う印象を受けるのではないでしょうか。

これは「コブシメ」というコウイカの一種です。写したのは目だけです。一部分を切り取った写真を撮られている方もおられますよ。ヒレのアップだけを写している方も知っています。

こういう写真ももちろんありです。余裕があれば試してみてくださいね。

7.水中写真の撮影にこだわりを持っていこう

最後に距離を考える上でこだわっていることをお伝えしようと思います。これはあくまでも筆者の考えなので、必ずしも正しいとは限りません。1つの考え方として読んでいただければと思います。

撮影をする際に、状況が許せば以下の2点を考えて写していますし、そのためにはどこから写せばいいのかをその場で考えて写しています。

・「どこかに青い部分を入れたい」
・「周囲の環境を取り込みたい」

  • 生物から距離を離すとき

実際に液晶を見たりファインダーをのぞいたりする過程で、次のように感じた時

・「青が入らない」
・「被写体のアップだけになってしまう」

  • 生物に距離を近づけるとき

・「これじゃ被写体が小さくてわからない」
・「表情がいい」

クマノミの写真ですが、イソギンチャクだけ写さずにあえて右上に青い海を入れています。クマノミが住む沖縄の青い海を感じてほしかったのです。「クマノミはこんなに青い海に住んでいる」ことを伝えるために入れました。

これは「ヒメイカ」という小さなイカですが、これで成魚です。海藻の裏側に身を潜めて暮らしていることを伝えたくて環境を取り込みました。イカのアップだけ写してもおもしろくないなあと感じたからです。

これはイシモチの大群の中を捕食者であるハタがハンティングしている様子です。ハタの強さとイシモチが逃げる様子を伝えようと思いました。

「青い部分を入れる」「環境を取り込む」という良さがなんとなくわかっていただけたでしょうか。これはあくまでもマイルールです。あなたもこれから写真を撮りながら、自分が伝えたい世界観とそのための被写体との距離をぜひつかんでほしいと思います。

【中級編】水中写真の第5回まとめ

以上、今回は「被写体との距離」について作例を使いながらお伝えしました。同じ被写体でもカメラとの距離や写し込む範囲によって写真が大きく変わります。今回お伝えしたことを参考にして、多くの写真を撮影してほしいと思います。

作例は今回「横位置」の写真が多くなりましたが、前回お伝えしたように横位置だけでなく、縦位置の写真も必ず取り入れましょう。それと距離感を考えていけば、写す範囲が変わってくるのであなたの写真にアクセントが加わりますよ。

また機会があれば、「マクロ写真の撮り方」や「ワイド写真のコツ」などについてもお伝えできればと思っています。

今回の記事があなたの水中写真ライフにとって1つでも参考になれば嬉しいです。楽しくダイビング&水中写真に取り組んでみてくださいね。

【中級編】ダイビングの楽しみが広がる!水中写真

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