【初級編】ダイビングの楽しみが広がる!水中写真第2回 撮り方のコツ

【初級編】ダイビングの楽しみが広がる!水中写真第2回 撮り方のコツ

第1回水中写真の初級編では、水中写真を撮る前の心構えと、どんな器材をそろえればいいのかということを中心にお伝えしてきました。第2回水中写真の初級編では、水中写真を撮る上で必要な「基本的な撮り方」についてお伝えしていきます。

水中写真の基本とは

1.まずは水中写真をオートで写してみよう

これから水中写真を撮ろうという方はもちろん、もうすでに写真を自分なりに撮り始めていて上達したいと思われている方は、ぜひここから読んでいただきたいです。

おすすめは、「最初はフルオートで撮ってみよう」です。難しいことは考えなくてカメラに任せたらいいのです。水中モードがあれば設定をそこに合わせ、後はシャッターを押すだけです。

まずは写真を撮る楽しさを味わってほしいですし、写ったときの喜びを体験してほしいのです。水中写真撮影は楽しいものです。またダイバーが楽しんでいないといい写真は撮れませんからね。

もしかすると、最初はフルオートで写してもうまく撮れないことがあるかもしれません。それでも問題ありません。私も同じでした。その分、写っている写真があれば大喜びでした。まずは「写真に写っている」ことを目標に写してみればいいのです。

海で初心者にアドバイスするときは、以下のようにお話をしています。
コンデジの方には、オートでの撮影をするように。
ミラーレス等の一眼の方には、絞りやシャッタースピードを固定し、外付けストロボを使用している方にはさらにTTL設定にするように。

いきなりマニュアル撮影を進めてこられるベテランの方もいらっしゃるかとは思いますが、それは慣れてからで十分です。それこそ1枚も写っていないこともありえます。水中写真は難しくてつまらない、となったらもったいないですからね。まずは写っていることを優先しましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.水中写真のプレビューを活用しよう

以前の水中写真は「フィルムカメラ」が主流でした。デジタルカメラとの1番の違いは「写真を撮ったその場で確認ができない」ということです。 旅行から帰ってカメラ屋にフィルムを出して、数日しないとどんな写真が撮れているのかわからないのです。楽しみにしてカメラ屋に行き確認したら、フィルムがカメラ内で空回りしていることもあります。

経験を積み、その中でどの程度の絞りにしたらいいのか、を覚えていくことが大切だと言われていました。ですから、水中写真は難しく、一部のダイビング上級者の楽しみというように考えられていたのです。

今は全く違います。プレビューを使えばその場で今写した写真を確認することができます。魚が小さいと思えば、もう少し近寄ればいいですし、ピントが合ってないと思えば、その場でもう1枚写せばいいのです。

プレビューを上手に活用していけば、撮った写真を反省し、もっといい写真をその場で撮ることができるのです。プレビューをどんどん活用して、その場でもっといい写真を撮るようにしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.お気に入りの水中写真をイメージしてみよう

水中写真を撮りたいと思う理由の1つに、「あんな写真を自分でも撮ってみたい」と思う1枚があったのではないでしょうか? それは「青い海とサンゴ礁」かもしれませんし、「画面いっぱいのマンタ」かもしれません。あるいは「真っ白な砂地で泳ぐダイバー」かもしれません。

きっとあなたもそうした1枚を撮ろうと、今カメラに向かっているのでしょう。実はこのイメージがとても大切なものなのです。 プレビューで確認をして撮り直そうとしても、このイメージがないとどこがイメージと違うのかがハッキリとせず、撮り直すときの修正点が見つけられないからです。

理想の1枚とあなたの写真との違いはどこかを確認してから、撮り直してみましょう。

以下はプレビューを見て撮り直す際のチェックポイントです。理想の写真を撮るための参考になればと思い、初心者がチェックしたらいいと思う点をいくつか挙げておきます。

写真に奥行きと広がりがあるか

ゴミや浮遊物等で、ハレーション(白く光りすぎる)が起きていないか

自分が撮りたいものがきちんと写っているか

ピントが合っているかどうか。魚なら目に合っているか

その写真を他に見せたら、そのポイントに潜ってみたいと思ってもらえるか

作品に不要なものが写り込んでいないか

ダイバーが写っている(写っていない)

写真が白すぎたり黒すぎたりしていない

作品にできると思える写真か

これらを参考にして、プレビューで確認してみてください。今あなたは現場にいるのですから、今すぐに修正して、写真を撮り直してください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4.水中写真でストロボを使おう

前編でも少し触れましたが、水中は赤色が吸収されやすく、どうしても青っぽく写真が撮れてしまう「青かぶり」という現象が起きてしまいます。

肉眼で見ている「カラフルで鮮やかな色」を写すためには、水深3mほどまでで写せば大丈夫です。しかし、ダイビングはそれ以上深く潜ることが普通にあります。その際、水中世界の鮮やかな色を再現するにはどうしてもストロボが必要となるのです。

初心者の方なら「コンデジと内臓ストロボ」で十分だとは思いますが、だんだん慣れてきて「もっときれいな写真が撮りたい」と思い始めたら「外付けストロボ」を取り入れることをおすすめします。

陸上と水中では、ストロボの光が届く範囲が大きく違います。外付けストロボでも光が届くのは2mほどです。でもストロボの利点を生かすためには1mまでの範囲で、できるだけ近づいて撮ることが大切になってくるのです。

また、後でも触れますが、内臓ストロボだと浮遊物が白く丸く写り込む「ハレーション」という現象が起こりやすくなります。もし初級からレベルアップしようとお考えなら、「外付けストロボ」の導入を考えられた方がいいでしょう。

5.海の生き物にできるだけ近寄ってみよう

4でも触れましたが、ストロボの利点を生かすためにも、生物をハッキリ写すためにも、できるだけ近寄って写すことが大切なのです。

陸上ならカメラと被写体の間には空気しかありません。しかし、水中では間に水があります。プールに入って25m先の壁は、ぼんやりとしか見えないと思いますが、 近寄れば近寄るほど壁はハッキリと見える経験をお持ちでしょう。カメラと被写体の間に水がたくさん入ると当然ぼやけてしまい、ハッキリと写りにくくなってしまうのです。

もちろん魚にプレッシャーや恐怖感を与えてはいけません。そっと近づき、1m以内に、できれば70cm、いや50cmまで近寄れたら最高です。

そっと近づくためには、魚の生態に詳しくなる必要があります。魚が警戒している仕草や、これ以上近寄らないでというサインがわかるようになるからです。それについても後で触れていますので目を通してみてください。

うまく近寄れると、「フレームからはみ出している」「こんなに体の模様がきれいだったのか」等新たな発見があるかもしれません。その時は「上半身だけ撮る」「顔のアップを撮る」「体の模様が目立つように写す角度を変えてみる」などやってみると、写真の世界が広がると思います。

 

6.海の生き物に寄って写すことで、浮遊物を減らしてみよう

毎回透明度のいい海で潜れるとは限りません。透視度が1mから2mほどの濁った海を好む生物もいるのです。例えば「オイランハゼ」という魚はまさにそうした環境を好むのです。オイランハゼの体の模様は花魁という名前にふさわしく、きれいで、見たらきっと「撮りたい」と思う方も出てくるでしょう。

5でも触れたように、カメラと魚の間に水をできるだけいれないようにすることが大切です。ましてやその水が濁っている場合だとなおさら近寄って写すことが必要となるのです。

濁った水にはごみや泥の粒等がたくさんあります。それらにストロボを当てると当然反射してカメラに写り込んでしまいます。被写体にできるだけ近寄り、浮遊物の写り込みを極力抑えることもいい写真を撮る大切なポイントとなるのです。

 

7.水中カメラのピントを合わせよう

クマノミ等かわいい魚が海の中にはたくさんいます。水中写真を始めたなら、きれいにかわいらしく写したいときっと思うはずです。

その時に意識してほしいのが「目にピントを合わせる」ことです。よく「目は口程に物を言う」と言われますが、それは水中写真でもあてはまります。 インパクトが強い写真を撮りたいのなら、目にしっかりピントを合わせることを頭に入れておきましょう。大きな魚でも小さな魚でも同じです。

フィルムの時とは違い、露出に関してはある程度撮った後にパソコンで修正することができるようになりましたが、ピントが合っていない写真は、パソコンでも簡単には修正できません。 ピントの合った写真を撮ることを心掛け、ピントが合ってない場合は、すぐにその場で撮り直しましょう。

8.水中写真のライティングを工夫しよう

内臓ストロボではできませんが、外付けストロボならば「光を当てる角度を工夫する」ことが可能です。ストロボの光を上から、横から、下からと当てる角度を変えて写してみましょう。

「魚目線から光を当ててみる」と面白い写真が撮れると思います。「魚から見るとこう見えるんだ」とか、「魚の表情も、角度によってずいぶん違うなあ」とかが伝わる写真になるはずです。ちょっとこだわったストロボの当て方にチャレンジしてみてください。

9.ダイビングのスキルをアップさせよう

海の環境は様々です。あなたが撮りたい魚や風景をきれいに写すには、どんなダイビングスキルがあればいいでしょうか?いくつかの例をあげてみたいと思います。

A サンゴ礁の真ん中にいるきれいなイソギンチャクとクマノミを撮りたい。しかし、サンゴはびっしりと生息していて、着底するところも掴める場所もない

これは西表島で実際にあるシチュエーションです。自分のホースやオクトパスをサンゴに引っ掛けてサンゴを壊さないように中性浮力を保ったまま撮影する必要があります。どのようなダイビングスキルが必要かはもうわかりますね。

B 流れがある海で回遊魚を写したい。しかし流れで体は不安定で、ジッとしていたら流されてしまう。

このようなポイントも数多くあります。与那国島の西崎やパラオのブルーコーナーなどはこのような感じです。流れに負けないフィンキックや根にしっかりと着底できるよう水中で体をコントロールする力などが求められます。 仮に着底できなかったとしても、そこまで自力で戻れるくらいのスキルもあった方がいいでしょう。

沖縄のギンガメアジポイントで潜ったときに着底できず、流された後自力で着底場所まで戻ったことがありました。 エアーが少なくなり、周囲に迷惑をかけてしまった苦い経験があるのです。こうしたポイントは上級者向けになりますが、水中写真を上達させたいならどんな海でも対応できるダイバーにならなければなりません。

 

 

C 泥地にいる珍しいハゼを写したい。泥地は手を入れてみたらずぼっと腕が奥の方まで入ってしまうほど軟弱で掴むものもない状況。

これは沖縄本島のレッドビーチ等で実際にあるシチュエーションです。濁った水中できれいな写真は撮り辛いことは理解できるでしょう。ハゼを写す場合はどうしても着底は必要となります。

しかし、このような場所では、間違いなく着底したときに泥を巻き上げてしまうでしょう。量が多かったなら周囲は濁ってしまい、ハゼはもちろんガイドも見えなくなってしまいます。

できるだけ巻き上げないようにそっと着底し、しばらくはジッとしておくことです。そうしたら、泥はまた水底に落ちてきます。それまでバタつかないようにするスキルが求められます。

写真を撮り終わった後に、安心してフィンを強く蹴って浮上すると、また巻き上げてしまいますので、そこを離れるときも巻き上げないように離底するスキルは持ち合わせたほうがいいです。

こうしたことを考えると、自分のダイビングスキルをアップさせることで、いい写真を撮るチャンスは増えることが理解してもらえたと思います。

初心者のうちは、ただ写真を撮ることや写真の上達だけを考えるのではなく、中性浮力の取り方、フィンキックの仕方、着底の仕方や離底の仕方、生物への近寄り方、離れ方など。 マンツーマンではなく複数カメラマンがいるときの配慮の方法等を知っていくことも水中写真の上達への近道であると理解しておいてほしいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


10.インストラクターによってダイビングの海は変わります

ダイビングショップを選ぶ際に「水中写真に詳しい」「生物に詳しい」ショップを選ぶようにしています。ダイビングショップやガイドにはそれぞれ特徴があります。ホームページを見たらだいたいわかりますので、そうしたショップやガイドを探して潜ることが大切です。

魚に詳しいガイドは、様々なネイチャーシーンを探し出してくれますし、小さな生物できるだけたくさん見つけてくれます。そうした機会に多く遭遇できればおのずといい写真が撮れるチャンスも増えます。

また「その海をよく潜っているガイドのいるショップ」で潜ることも大切です。その海で日ごろ潜っているガイドと、ツアーの時だけ行って潜るガイドでは、同じイントラでも現地の海の情報には大きな差があります。 私は都市型のショップツアーはなるべく控え、現地ショップに申し込んでダイビングをしています。

どの地域でも、そうしたガイドは必ずいます。毎回同じコースを回ってくるショップやガイドではなく、生物を探せるガイドと一緒に潜りましょう。ここは自分で調べるか、SNS等でダイビングの情報を教えてもらうしかありません。時間をかけて探してみてください。

11.潜る前の水中カメラの準備。潜った後の手入れをしっかりしよう

最後に「準備と片付けについて」です。

まずは潜る前に大切なことをお伝えします。水中写真を撮る際に1番怖いのは「水没」です。水中でハウジング内に水が入ったら、カメラもレンズも終わりです。これは避けなければいけません。

ハウジングが重なる部分に「Oリング」というゴムの部分があるものが多いはずです。セットするときに、Oリングの上にごみや髪の毛等を挟み込んでしまうと、水中ではそこから水が入ってきます。

目で見てそうしたものがないことを確認して蓋をし、丁寧に扱ってください。できればショップにある水槽にカメラをつけてみて、水没チェックをしたら安心です。

陸でのセットをおろそかにすると、他にもバッテリーの入れ忘れやSDカード等の記録メディアの入れ忘れ、レンズキャップをしたままハウジングに入れ、水中に行った等のミスをしてしまいます。 バッテリーの入れ忘れは実際にやりましたし、水没でカメラをダメにしたこともあります。

経験者だから言えることですが、ショックがとても大きいものです。いずれも陸できちんと確認していれば防げたことですので、そうならないようにしっかりと行いましょう。

ダイビング後はしばらく真水につけたままにして「塩抜き」をしっかりやりましょう。不十分だと各ボタンで潮が固まる「塩噛み」という現象が起こります。そうするとボタンやレバーが動かなくなり、最悪故障の原因となります。 ダイビング中は時間がないかもしれませんので、帰宅してからメンテナンスも兼ねて時間をかけて行ってください。

 

 

水中写真第2回のまとめ

いかがでしたでしょうか。「水中写真の基本」ついてお伝えしました。

基本がマスターできたらいよいよ中上級コースへステップアップです。構図やレンズ選びなどをお伝えしていきます。

海は世界中に広がっています。その海でしか撮ることのできない写真、あなたの世界観がいっぱい詰まった写真をたくさん写してください。

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